第10章 シャッフルユニットやってみた

 その日、あみとゆみはみらいの実家の店でカップケーキを食べながら話をしていた。
「この前のゲストライブ、楽しかったね」
「あたしたちだけじゃマンネリ化するし、またやろうね」
「あみは精力的にライブに誘うよね」
「まぁね」
「さすがは平成末覇王だね」
「何よその称号」
「え、小説にあったよ。アイドル百人斬りの覇業の末、女神をも従えた平成末覇王って」
「だから、その誇張は何なの!」
「世紀末じゃないし、丁度、天皇陛下が退位されるから平成末なんじゃないかな」
「いや、称号の語源はどうでもいいから」
「でも、あれだけいる中から、誘うメンバーを的確に選んでた気がする」
「それはね…」
 あみが言いかけるとれみとまみが到着した。
「何の話してたんですか?」
「あみがこの前のわちゃわちゃ会でゲストさんを選んだ理由を聞こうとしてたところ」
「へぇ、我も興味ある!早く教えるのだ!」
「だから、言おうとしたらまみが現れて中断しただけだって!」
「あ、そうか…ごめんごめん」
「実はね、わたし、元の世界で、あの3人とそれぞれライブしたことがあるんだ」
「あっ、そうか。この世界と元の世界、どちらにもいる人っているんだよね」
「そりゃそうか。どちらでもガンダムやってたりするしね」
「声優さんや監督さんはどちらの世界にもいるってわけですね」
「向こうの世界で向こうの自分と会ったらどうなるんだろう?」
「以前、3DSを使って異世界の自分とライブしたことあるけど、普通に喋れたし、何も変わったことはなかったよ。でも、なるさんの店でデザイナーやっている異世界の自分を見た時は、同化してる感じだったので、会話はできなかったし、いろいろなケースがあるみたい」
「なるさんって、ハッピーレインの?」
「うん」
「あれ?」
「れみ、どうした?」
「たまたまだけど、隣のテーブルの人の髪型、なるさんに似てるなって思って」
「…!」
「あみ、どうしたのだ?」
「多分、あの人、元の世界でライブした人だと思う」
 テーブルには3人座っている。こちらから見える二人は、少し雰囲気が違うけど、プリパラで競演した人たちだ。

 あみは隣のテーブルに向かった。
「あ、もしかして、ロコさんとめばえさんですか?」
「あ、はい。そうです…どこかでお会いしたこと…あるような気はするんですけど」
「わたしはあみっていいます」
 名乗ってもさすがにそれで判るわけもなく。
「プリ☆チャンやっててプリスタで、とかですか?」
「あ、そんなところです。あなたははじめまして、ですよね」
「めばえの弟のわくとです」
「あ、弟さんなんですね」
 男のコは珍しい…あ、そういえば、レオナさんもそうか。
 あみは言いかけた感想を引っ込めた。
「今日のライブ配信のネタを相談してたんですけど、なかなか思いつかなくて…」
 ロコさんの状況解説に、あみはピンときた。
「あ、思いつきなんですけど、わたし達のチームとシャッフルユニットライブなんてどうですか?」
「あ、アイドルグループとかでやるやつですか?面白そうですけど、いいんですか」
「多分、うちはいつも思いつきでやってるから、メンバーも今度はそう来たか、くらいの反応だと思うよ」
「そうですか。じゃ、リーダーがもうすぐ来るので聞いてみますね」
 めばえさんがそう言った時、
「あれ?うちの舎弟が何かやらかしましたか?」
 プリパラのじゅのんのような派手なサイドポニーにオッドアイのカラコンのコが声をかけてきた。
「いや、別に舎弟じゃないし」
 めばえさんがつっこむ。
「あ、えっと、チームのリーダーさんですか?」
「え?リーダーはこっち」
 オッドアイのコが指差す先に青いポニーテールのコがいる。
「はじめまして。チームリーダーのまもるです。ちなみにこのコはリアーネ」
「よろしく」
「あと、後ろにいるのがあいちゃむ★」
「あ、はじめまして」
 オレンジのツインテのコが会釈する。
「はじめまして。あみといいます」
「あみさんから、あみさんのチームとのシャッフルユニットライブのお誘いがあったんだけど」
 ロコさんが説明する。
「面白そうですね。いいですよ。ぜひやりましょう」
 まもるさんは快諾してくれた。
「じゃ、うちのメンバー呼びますね」
 あみは振り返り、手招きする。れみたちがぞろぞろとやってくる。
「…というわけで、こちらのまもるさんのチームとシャッフルユニットライブやることにしたんだけど」
「ほう、今度はそうきたか。面白そう!」

「じゃ、話まとまったんで、よろしくお願いします。メンバー、紹介しますね」
「れみです」
「ゆみです」
「まみです」
 各々名乗って会釈する。
 まもるさんのチームも改めて自己紹介する。

「さて、10人をどう分けます?」
「5人ずつだと同じ曲で面白みがないから、元の6人と4人はどうかな」
「ですね。うちはわたしのチームとれみのチームに分けようかな」
「対決じゃないから、わたしはまもるさんとリーダー同士くっついた方がいいのかな」
「わっ君はせっかくだからめばえと別のチームにする?」
「そうだね」
「わくと君は私のチームになるのかな」
「よろしく。れみさん」
「じゃ、私とロコは、私達を元々知ってくれてたあみさんのチームかな。それで、リアーネとあいちゃむ★がれみさんチームで半々だね」
「ここまでで4人と4人か。まみとゆみはどっちにする?」
「じゃあ、あたし達は、あみとれみがじゃんけんして、勝ったほうに入ろうかな」
 れみがじゃんけんに勝ち、チーム分けが決まった。

「それでは、それぞれライブを始めようか」

 結果、行き当たりばったりの企画にしては結構いいものになり、どちらのチャンネルも、結構「いいね」を集めることができた。

「今日はありがとうございました」
「楽しかったですね」
「せっかくだし、みんなで打ち上げにでも行きますか」
「いいですねー」

 結局、ライブの後も大盛り上がりな一日になったのだった。


今回のライブシーン
     
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