第9章 わちゃわちゃ会を開いてみた

 その日はあみ以外は全員何かしら用事があって、あみは退屈していた。
「けっこうソロ曲もいい曲あるし、久しぶりにソロライブしようかな…」
 ちょうど、手元には『あらいぐまラスカル』のコラボコーデがある。これを試着がてら、あみはソロで配信しようと配信スタジオへ向かった。
 残念ながら、誰かが使用中のようだった。あみは待合で待つことにした。暫くすると、先客のコが出てきた。
「あ、順番待ちでした?お待たせしてすみませんね」
「あ、いえいえ、大丈夫です」
「私、ニチカっていいます。ここで会ったのも何かの縁。良かったらフォロチケ交換しませんか?」
「ええ。喜んで。わたしはあみです。あ、ニチカさん。良かったら、折角なんでライブにゲスト参加しませんか?」
「では、お言葉に甘えまして。ご一緒させてください」
 そんなわけで、久しぶりにゲストを招いてのライブをすることとなった。
 なんだか、プリパラでいろいろなコとライブしたのが懐かしい。

 次の日。あみとれみは一緒にプリズムストーンで仕事をしていた。
「でね、昨日、ニチカさんってコと一緒にライブしたんだ」
「あみはプリパラでも100人とライブするとか言ってましたよね」
「そうそう。なんだか懐かしかった」
「また、ここでも100人斬りに挑みたくなったとかですか?」
「多分、そこまではしないけど…早く元の世界に帰らなくちゃだし」
「でも、テコ入れでゲストを招くのは面白そうですね」
 そんな話をしている間に休憩時間になった。仕事の手は止まっても、お喋りは止まらない。
「ゲストと言っても、みらいさんやあんなさんも参加してくれたし、他はどうかな?」
「そういえば、この前、りんかさんもキラッツのメンバーとしてライブしてたよ」
「あ、あの眼鏡のスタッフの人だよね」
「ちょうど配信してますよ。今日はソロで出てる!」
「わっ…眼鏡取るとすごい美人さんだ…いつかゲストに呼びたいな」
「ですね。あ、別のチャンネルで配信はじまります」
 れみが別のサイトを表示する。初めて見る緑髪のコがライブしている。
「あ、この前の友達100万人の人と同じアイドル学校のコみたいよ」
「スターハーモニー学園でしたっけ…って、ああっ、あそこ!」
 なんと、そのコが歩いている。真剣な顔でヘッドホンをしている。楽曲のチェックでもしているのだろうか。
「…」
 そのコは、ふとれみ達を一瞥すると、無言でカウンターに自分のフォロチケを数枚置いた。
「なみりーん☆、あなたたちとフォロチケ交換したいみたいです」
 なみりーん☆ってコの横に居た人が補足する。マネージャーさんだろうか。
「あ、どうぞどうぞ。私はれみ。このコはあみです。よろしく」
 れみとあみがフォロチケを渡した。
「…」
 なみりーん☆さんは無言のまま、ぺこりと頭を下げた。
「良かったら、私たちのライブにゲスト参加しませんか?」
 れみが誘ってみる。
「…」
 なみりーん☆さんは無言のままだけど、少し微笑んだ。OKのようだ。

 いざ、ライブすると、なみりーん☆さんはいきいきとしていた。お仕事スイッチ入ると凄いんだ…さすがはアイドル学校の人だ。

 ライブと共に休憩時間も終わり、あみとれみは仕事に戻った。届いたダンボール箱を運びながら話を続ける。
「この箱、結構重いね」
「中身はチラシみたいですね」
 二人は箱をカウンターの横に置いた。
「やっぱり、ゲストを招くのもおもしろいですね」
「だね。いろんなコとライブするのも勉強になるし」
 そんな話をしていると、まみとゆみがやってきた。
「ゲストがどうしたのであるか?」
「うちのチャンネルも、時々ゲストを呼ぶのも面白いなって話をしてたんだ」
「ゲストのコとやるの、楽しそうだね。あたしもやりたいな」
「あ、そういえば、今度、ゲスト探しにうってつけのサービスが始まるはずですよ」
 れみが横にあったダンボールを開ける。
「それ、さっき積み込んだチラシの箱だよね」
「はい。新サービスの告知チラシです」

 あみたちはチラシを見た。
「えっと、『わちゃわちゃ会、始まります』だって」
 一緒にライブしたり、プリスタにいいねしたり、フォロワーになってくれたりしたコに一斉に招待状を送ってみんなでわちゃわちゃする会とある。
「ここに来てくれるコだったら、ゲストになってくれないかな?」
「いいかも。サービス開始したらさっそくやってみよう!」

 そして、わちゃわちゃ会の当日。
「わぁ、結構来てくれたね」
「なんか嬉しいね」
 ただ、みんながわちゃわちゃと流れてる感じで、なかなか話をする余裕がない。
 そんな中、見知った顔も。
「あ、みらいさんがきてくれてる!」
「へへ、呼ばれたから来たよ!えもちゃんもどこかその辺にいると思うけど…」
「ありがとう。えもさんも探してみるね」
 答えて横を見ると、知った顔が。
「あ、ニチカさん!お久しぶりです」
「どうも」
 他にも、以前コーデを貸してくれたコ、音響機器故障とあった時に復旧してることを教えてくれたコ、以前置手紙的にフォロチケを残していた眼帯のコもいた。眼帯のコ、無事あみたちの残したフォロチケを見つけてくれたみたい。
 ただ、なかなか話をしにいけない。
 そんな中で、あみはひとりのコを見た。

 まいまいさん?

 プリパラ世界で最後にペアライブしてずっトモチケ交換したコだ。この世界にもいたんだ…
 そういえば、縁があればまた会えるかもねって話をしたっけ。

 あみはまいまいさんのところへ駆け寄った。
「こんにちは」
「あ、こんにちは。あみさんって、小説の人ですよね。初めて会う気がしないです」
「実は、プリパラの世界のまいまいさんと一緒にライブしたことがあるんですよ」
「へぇ、異世界の私ですか?会ったらよろしく言っておいてくださいね」
 冗談と受け取ったのか、まいまいさんは驚いた様子はなかった。
「あ、あそこにいる3人、友達なんだけど…あ、向こうへ行っちゃいましたね」
「あ、引き止めてごめんなさい」
「いいですいいです。隣の方は…」
「あ、れみといいます。よろしくお願いします」
 れみがフォロチケをまいまいさんに渡す。
「あ、れみ、このコーデで映画のエキストラ、一次選考通ったんですよ」
 あみが補足する。
「すごい!いいなぁ、私も応募したけど、落ちちゃった」
「わたしも落ちたんだけどね」
 あみが苦笑いする。

 しかし、両方の世界にいるコもけっこういるかも…
 あみがそう思い、会場を見回すと…いた!

 確か、いいねを時々送ってくれていたコだ…
「えっと…ぺんちゃん★さんですか?」
「はい」

 あと、すれちがい通信をきっかけにトモチケ交換したコ。
「おふぇりあさんですよね?」
「ええ。あみさんのフォロチケ、交換所で見つけてゲット済みですよ」

 やはり、元の世界で知り合った人とは同様に仲良くなれそうだ。
「あの、お三方、良ければ次のライブ、ゲストに来てもらえませんか?」

「もちろん喜んで参加させてもらいます!」
「なんか、抽選に当たったみたい!」
「よろしくお願いします!」
 三人ともOKしてくれた。

 さて、ライブ当日。
「そういえば、ゲストは3人来てくれるんだよね」
「うん」
「ライブって最大で6人だよね」
「あ、そっか。わたし達が4人だから、全員は無理か」
 あみはようやく気付いた。そこで、れみが
「じゃ、この前のゲストさんの時に私が出たから、私が外れます」
「そう?ごめんね」

 ゲスト3人、チーム3人でのライブ。とりあえず、両方の世界を合わせれば、あみは全員とライブ経験はあるけど、殆どがはじめましてだ。
 あみにしても、こちらの世界のゲスト3人とは初の競演だ。
「とりあえず、わたしがリードして合わせてもらう感じかな」
「ですね。あみさんがキーですから」
「とりあえず、やってみよう!」
 さすがはみんなチャンネル配信やってるだけあって、すぐに息をあわせることができた。ライブは大成功だ。

「はー、楽しかった」
「またやりたいね」
「あ、あみさん達も今度はうちのわちゃわちゃ会にも来てくださいね!」
「ぜひぜひ!」
 盛り上がるだけ盛り上がって、その後、解散した…と思ったのだけど。

 れみがあみの着替えを待っていたら、まいまいさんが戻ってきた。
「せっかくだから、れみさんともライブしたかったですね」
「私もみんなのライブ見てたら、ちょっとウズウズしたかもしれません」
「あみさんが戻ったら、もう一曲いってみますか?」
「いいですね」

 あみは更衣室から出てきて、れみから話を聞くや、踵を返して更衣室に消えた。
「ゆみ、まみは?あ、もう帰った?あ、ぺんちゃん★さん、もし良かったら…」
 アンコールライブを勧誘するあみの声が聞こえてくる。

「あみらしいというか…」
「あの人のバイタリティはすごいですね…」
 れみたちはそんな話をしながら状況を見守った。

 結果、残ったのは5人。
「5人ライブなら、ステージかな」
「ところで、コーデは?まいまいさん以外は着替えて私服だけど…」
「ゆみさんの私服、可愛いですね。アースマジック?」
「はい」
「じゃ、このままやっちゃう?」
「私のも風船以外はそんなに衣装衣装してないし、このままやっちゃいましょう」

 そして、急遽実施したアンコールライブも盛り上がって終わった。

「そういえば、今度また大会がありますね」
 ライブ後、まいまいさんが話を振る。ただ、日程的にあみ達の参加は難しそうだった。
「わたし達は都合つきにくいし、エントリーも抽選なら、今回は見送りかな。でも、別の機会にまた会いたいね」
「そうですね」

 そして、今度こそ解散した。

 とはいえ、あみ達とぺんちゃん★さんは帰る方向が途中まで一緒だった。
「どうでした?今日のライブ」
「楽しかったですよ。普段は仲間内でやることも多いので」
「あ、チームで活動されてるんですか?」
「ええ、9人チームなんですよ」
「野球ができそうですね」
「とはいえ、仲間内の相互フォローでいっぱいいっぱいで、チーム外にフォロトモいるのは私くらいかも」
「あ、だから、わちゃわちゃ会、単独参加だったんですね」
「そうですね。でも、また機会があればぜひ」
「その時はよろしくお願いしますね」

 わちゃわちゃ会…この世界との絆が強くなりそう…元の世界に戻る時、つらくなるかも。
 でも、楽しいから、いいのかも…
 れみは、なんとなく、そんな事を考えていた。


今回のライブシーン
     
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