第5章 スペシャル大会にエントリーしてみた

 あみ達はスペシャル大会の参加申請をすることにして、窓口に来ていた。
「えっと、参加資格は…」
「基本、ユニットでも個人でも申請可能みたいね。併願も可、だって」
「一応、誰でも参加は出来るみたいだけど、本戦トーナメントに進める目安があるみたいだよ」
「我とゆみは残念ながら目安に届かないのである」
「じゃ、決まりだね」
 あみが言う。ゆみはそれを聞いて、
「あたしたちの分もがんばってね」
「えっ?」
 あみが驚く。
「えっ?」
 そのリアクションにゆみとまみが驚く。
「あみ達がソロで出るんだよね?」
「なんでそうなるの?」
「だって、あたしたちのランクは…」
「だから、ユニットならなんとか届くから、ユニットで行こうって言おうとしたんだけど…」
「え?そうなの?」
「みんなで出ないと意味ないし」
「そういえば、れみは最初から黙ってるけど…そう思ってた?」
「あみとはつきあい長いですもん」
 すべてお見通しという事だ。

 そして、予選開始。とりあえず、予選期間中にエントリーしたチャンネルに集まったいいねの数の上位から本戦トーナメントに進む。
 あみたちは他のチャンネルの様子を見た。データ分析に基づき、楽しめる要素を集約したチャンネルから、グループ全員で巨大な飴を舐めきることに挑むチャンネルまで、色々工夫をこらした動画を上げている。
「わぁ、どこも面白いのやってるね」
「いや、感心してないで、うちも新しい動画をアップしないと!」
「何しようか」
「プリパラ出身を売りにするんだから、プリパラコーデでライブするとか」
「なるほど。じゃ、久しぶりに使うか。これ。少し前なのに懐かしいな」
 あみがコーデを取り出したとたん、思わずれみがつっこむ。
「なぜにレッスン着?」
 しかし、ゆみ達は、
「わぁ、アニメやゲームでらぁら達が着てたのと一緒だ!すごい!」
 逆に新鮮なのか、普通に盛り上がっていた。
「じゃ、いっそ、ゆみがそれ着て、わたしが今のレッスン着を着てライブしようか」
「お互い、相手の世界のレッスン着を着比べてみた、って感じかな」
「確かに、旧ザクとザクのコラボみたいでウケそう!」
「いいかげんザクネタから離れなさーい!」
「旧ザク?」
「前にネタにしたガンダムのザクで、動力パイプとかのない地味な機体が出てきて、それが「旧型ザク」という名前でプラモデルが出たんだ」
「あ、それで旧ザクっていうんですね…」
 この世界に来て、なぜかガンダムの知識だけが増えていくれみであった。

「さて、レッスン着動画はどうかな…」
「あっ、思ったより「いいね」がついているぞ」
 れみとまみは一緒に動画をチェックしていた。
 そこへあみが入ってきた。
「どうかな」
「けっこう「いいね」が集まってますよ」
「あ、でも待つのである!」
「まみ、どうしたの?」
「ものすごい勢いで「いいね」が集まっているチャンネルが二つあるのである」
「え?どこどこ?」
「まずはミラクル☆キラッツであるが…」
 みらいとえもが観客の子供たちと一緒に楽しそうに巨大アートを描いていた。
「わぁ、楽しそう!」
「それと、もう一つ…」
 ゆみが「いいね」の増え方を見て言った。尋常じゃないペースだ。
「バケモノか?」
 以前、メンバー脱退で活動を休止していたメルティックスターの復活ライブだった。
 あみとれみは息を飲んだ。この二人の実力はかなりのものだ…
「なかなかすごいですねぇ。抜けてたのはどっちの人ですか?」
 れみがゆみに聞く。
「あ、もとは3人で、抜けたのは別の人だよ」
 そして、更に、まみが補足する。
「メンバーのあんなとさら、どちらも個人のチャンネルの「いいね」も我らのチャンネルより多いのである」
 ということは、ソロと併願してなかったら、ダントツなわけだ。いや、併願しててもダントツみたいだけど。
「でも、他の有力チャンネルで、ソロとユニットで「いいね」を取り合って自滅したところもあるみたいだし、うちもまだ本戦の可能性残ってるよ」
「本戦に出れるのは上位12組。現在うちの順位は…」
「13位だね」
「もう一息かぁ」
「でも、評価に良い事書いてくれてるよ。大会直前に立ち上げたにしては大健闘。ダークホースになるかも、だって!」
「それなら、もうひと頑張りだね」
「うちの売りはプリパラの実績によるライブだけど、さすがにネタが苦しいね」
「とは言っても、いきなり「みんなでマカロン焼いてみた」とかしてもダメだろうし」
 悩むメンバーにあみが言う。
「わたしに考えがあるんだけど」

 あみの考えは基本にかえって考えたものだ。
 プリパラの原動力は「みーんな友達、みーんなアイドル」だ。
「フォロチケ交換所へ出向き、ゲストをスカウトするの」

 あみとれみは交換所へ行ってみた。
「フォロチケでフォロワーになって、相手もフォローしてくれたらフォロトモになれる。まずはフォローするコを探そう」
「どのように選びますか?」
「マンネリを防ぐ意味で、わたし達が持っていないコーデのコを選ぼうか」
「ですね。あ、このコなんてどうでしょう?」
「可愛いコだね。わたし達の持ってないコーデだし」
 と、一枚のフォロチケに手をのばすと、
「あ、使ってくれるんですか!ありがとうございます!良かったらフォローさせてください!」
 なんとそこに本人がいた。
「あ、もちろん、よろこんで!」
「いや、なかなか他の人に声、かけづらいし、私のフォロチケを手にとってくれたことできっかけができました」
「わたしたちもゲスト参加してくれるフォロトモを探しにきてたんですよ。せっかくだから、自分の持っていないコーデを着てる人の中から探したりしてね」
「確かに、レアリティ低い割りになかなか手に入らないコーデとかありますよね。私なんて、欲しいスカートが普通のレアなのに全然出なくて」
「え、このスカート?わたし持ってるから貸しましょうか?」
「いいんですか?じゃ、お礼に、私の手持ちで希望があればお貸ししますね」
 そのコが見せてくれたコーデの中に…
「これ、まさかキラっとコーデ?」
「ワンピだけですけど」
「これって、キラッとチャンス以外の時もキラキラ光るって噂だけど、見たことなくて」
「じゃ、お貸ししますよ。それで一緒にライブしましょう」

 フォロトモ作りから初キラっとコーデ、ゲスト参加ということもあり、このライブ配信はなかなか楽しいものになった。
 そして、解散後、突然声がかかった。
「ダークホースと聞いてどのようなチームか見に来て差し上げましたが…」
 赤い髪のお嬢様っぽいコがそこにいた。
「キラッとコーデを借りなければ着れない程度のヒヨッコでしたか」

「あなたは、もしかして…」
 あみのリアクションにそのお嬢様キャラが答える。
「空ぅ前絶後のスーパーセレブリティ!ワタクシこそが赤木あんなですわ」
 赤木とあんなの間に「ボン」と効果音が聞こえたような気がする。
「でも、そこそこの実力はあるようですわね。そこの物陰で見ているへっぽこプリ☆チャンアイドル程度になら勝てるかもしれませんわね」
「だーれがへっぽこですってぇ!」
 誰かが怒って飛び出した。
「えもさん?」

 一触即発かと思いきや、えもをみらいが、あんなをもう一人のコが慣れた感じで引き離す。
「あ、びっくりさせてごめんね。あんなはいつもこの調子だからね」
 このマニッシュなコはさっきの復活ライブでいた…
「ぼくは緑川さら」
「存じてます。復活ライブ、拝見しましたので」
 あみが答える。そして続ける。
「はじめは、あんなさんについて、人気グループの残党のお笑い芸人の方と聞いていましたが…」
 そこまで聞いてあんな以外が噴き出す。
「でも、実力はプリパラの神アイドルのひとり、みれぃさんに匹敵」
 あみは更に続ける
「そして、そちらのさらさんについても、プリパラのゴッドアイドル、ドレッシングパフェ。中でも、レオナさんに匹敵する実力者とお見受けしました」
「そこまで言ってもらえるのは光栄だね」
 さらがクールに返す。
「その、メルティックスターさんに目をかけてもらった以上、絶対本戦に勝ち進みます!」
 あみがババーンと宣戦布告する。
「それならば、このワタクシが本戦で蹴散らして差し上げますわ」
「ええ、その胸をお借りするつもりで全力でいきますね!」

 その一部始終を遠くから見ていた者が数人いた。その中の一組、眼鏡をかけた三人組が画面を見ながら言った。
「あのチームは土壇場で11位に浮上である」
「今の宣戦布告でいいねが集まったのであーる」
「今大会、要注意すべきはデータ分析から外れた行動に出るミラクル☆キラッツぐらいかと思っていたけど…」
「分析するデータすらない新参チームが出てきたのである」
「いずれにしても、わがチーム「出たとこ勝負」の敵ではないのである」

 そして、もう一人。帽子を目深にかぶり、サングラスをかけた女性。キラキラしたオーラを放っている。
 彼女は口元に笑みをたたえながら踵を返し、静かにその場を去っていった。

 そして、いよいよ本戦出場者が決まる。


今回のライブシーン
 
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