第4章 ミラクル☆キラッツに会ってみた
あみたちがこの世界に来て1週間が過ぎた。
「うーん、チャンネルのフォロワーは少しずつ増えてるけど…」
「有力な情報はないですね」
あみとれみが話していると、ゆみたちがやって来た。
「こんにちは」
「あ、こんにちは!」
「どう?元の世界への情報はあった?」
「んー、今日は全然ないね」
「いっそ、異世界へ帰りたい!とか発信してはどうだ?」
「多分、ギミックネタで異世界から来たって言ってるだけだと思われるって」
「確かにね。それに、プリ☆チャン以外にも動画配信サイトはあるし、色々な動画があるもんね」
れみが試しに、他の動画サイトを開いてみた。
「めざせ!友達100万人!」
実際のアイドルが公民館でボランティアでシンデレラの演劇をする動画が配信されていた。
「あ、この人知ってる!確か、アイドル科のある学校で、普通科から転入して、草の根でファンが急増してるってコだ」
「この前の芸能ニュースで言ってたよね。なんでも、雨の中、お客さんの落としたスマホを傘もささずに走って届けたとかって話が紹介されてた」
「うーむ、見習うべき立派な人だ…本当に友達100万人いてもおかしくない」
あみが感心していると、ゆみが画面を切り替えた。今度はプリ☆チャンのサイトだ。
「もちろん、プリ☆チャンにもアイドルのチャンネルはあるよ」
「あたしは偶然、この人に背中を押してもらって配信を始めたんだ」
ゆみが開いたのは「ミラクル☆キラッツ」というチームのチャンネルだった。
「探せ、キラッといいところ。桃山みらいです」
「エールは心のエネルギー。萌黄えもだよ」
「私たちのチャンネル、はっじまるよー!」
「あれ?このみらいってコ、どこかで…?」
「あっ!」
れみがフォロチケを取り出した。
「そうだ。会員証を作った時にもらったプロモーションのフォロチケのコですね」
「こっちの世界にもいるんだね」
「あー、ミラクル☆キラッツね。最近人気が上がってきてるわね」
めが姉ぇさんが通りかかって言う。
「そういえば、このコたちよ。プリパラの世界に行ったってコは」
「…めが姉ぇさん。そういうことは早く言ってください!」
「とりあえず、このコ達に会ってみよう!」
「どこに居るんだろうね」
「そういえば、ゆみはこのえもってコに背中押してもらったって言ったよね」
「うん。その辺で会ったから、この街にいるんじゃないかな」
「そういえば、あみ、みらいってコがフォロチケで着てるワンピース持ってるよね」
「あ、これ着て歩けば、何かヒントになるかも」
「れみも着る?」
「そこまで露骨にペアルックもアレですし、私はいいです」
れみはこの前入手した私服コーデを着ている。確かにあみとのバランス的にはこのほうが違和感がない。
暫く歩いていくと、いきなりヒットだった。ミラクル☆キラッツの片方の人がいた。
それも、れみと同じ服!
しかし、なぜか壁際に変なポーズで立っている。
「私は壁…超えもい壁…」
「何してるんだろ?あの人」
あみ達が不思議に思っていると、その前をネコがトコトコと歩いていった。ネコが去ると、その人は普通のポーズに戻る。
どうやら、ネコが苦手で、壁になりきってやり過ごしていたようだ。
「あれ?」
彼女があみ達に気付いた。さっきの一部始終をあみ達が見ていたことには気付いていないようだった。
「あ、こ、こんにちは!」
れみがあわてて挨拶する。
「わぁ、おそろいだね!やっぱり、この服、えもいよね!」
この人は確か…
「萌黄えも。上から読んでも萌黄えも、下から読んでも萌黄えも」
そうそう。えもさん。しかし、一度で印象に残る自己紹介だなぁ・・・
「わたしは、あみ。このコは、れみです。実は、えもさんとみらいさんにお聞きしたいことがあって…」
「そうなんだ、みらいにはこれから会うけど、一緒に来る?」
「はい、ぜひ」
「私とみらいは、小っちゃい時からの超・大親友!なんだよね」
「へぇ、そうなんですか」
そんな話をしながら、あみ達とえもは近くのカフェに来た。みらいともう一人、眼鏡をかけたコがいる。
「みらい、お客さんだよ」
「はじめまして。あみです」
「れみです」
「みらいです」
みらいはフォロチケと同じワンピースを着ていた。
「二人とも、服がおそろいなんてすごいね」
「せっかくだから、これで配信してみようか」
えもと眼鏡のコが盛り上がっている。
「あ、私はりんかといいます。ミラクル☆キラッツチャンネルの番組作りを担当してます」
へぇ。出演以外のメンバーもいるのか。
「そういえば、要件があるんだっけ」
「はい。実はわたし達、プリパラの世界から来たんです」
「!」
みらいとえもの表情が変わった。
「じゃ、らぁらやゆいと会ったことが…」
「ありますよ」
「やっぱり夢じゃなかったんだね」
みらいとえもは、かつてシステムエラーでプリパラの世界に飛ばされたことがあり、一日過ごしてこの世界に帰ってきたらしい。
その際、こちらではカフェでうたた寝をしていた一瞬のことだったらしい。
「ということは…」
「あなたたちがプリパラの世界に戻っても、うたた寝の一瞬じゃないかな」
「だといいんだけど。みんな心配するだろうし」
世界の間で時間の流れが違うことを聞いて、あみ達は少し安心した。ゆうき達が心配しているわけではなさそうだ。
「あ、ペアルックが面白いので、配信していいですか?」
りんかが聞いてくる。
「え、もちろんいいですよ」
数日後。
あみとゆみが雑談していた。
「ミラクル☆キラッツと競演して、ちょっとは知名度上がったかな?」
「見てみようか」
ゆみが『ミラクル☆キラッツチャンネル』を見ると、その次の動画が大ヒットして、あみ達との競演は埋もれていた。
「ま、いいけどね」
「でも、見て」
えもがネコとダンスをしている動画だった。
「わぁ、かわいい!」
「でも、えもさんって、ネコ、苦手って言ってなかったっけ?」
「そういえば…それで、こんなに楽しそうにできるなんて、プロだね」
「あ、そういえば、ネコ動画に使えそうなコーデ持ってたな…この前のお礼にえもさんに贈ろうかな」
「本当はネコ嫌いだったら逆に迷惑じゃない?」
「それもそうか…可愛いコーデなんだけどなぁ…」
そんな話をしていると、プリズムストーンにえもが入ってきた。
「あ、えもさん、こんにちは」
「あ、この前の…」
「ネコ動画見ましたよ」
「あ、ありがとう」
「えもさんって、ネコがお好きなんですか」
ネコが苦手そうな場面を見たことは内緒にしておこう。
「実はね。ネコが苦手だったけど、迷いネコを預かることになって、一緒にダンスしたら可愛くなって」
「そうなんですね」
「でも、飼い主が見つかって、残念ながらあのネコちゃんとはお別れしたんだけどね」
「あ、だったら、この前のお礼にと思って用意した…」
あみは手持ちのコーデをえもに見せた。
「ネコ柄のコーデなんですけど、別なもののほうが良かったですかね。次のネコ動画はないんですよね」
「いやいや、すごくえもいよ。このコーデ!さっそくこれ着て一緒に配信しようよ」
「よかった。気に入ってくれて」
「そういえば」
えもが思い出したように言う。
「今度のスペシャル大会、出るの?」
「え?大会ですか?」
あみは、はじめて大会のことを知った。
「出れるなら、出たいです!」
あみは、この台詞でえもに宣戦布告したことにまだ気付いていなかった。
今回のライブシーン
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