第3章 チームを結成してみた

 あみとれみはプリズムストーンで働くことになった。働くといっても、ちょっとした手伝い以外は店お抱えのプリ☆チャンアイドルとしての活動をするくらいのものだった。
 店のシステムエラーで異世界から召喚してので、寮を提供するけれど、表向きの名目、とのことだったが、ユヅルさんの話のとおり、店長の人使いは荒く、れみは仕入れの手伝いで今日は不在だった。
「あみー!さっそく来たぞ!」
 まみがゆみを引き連れてやってきた。
「あ、いらっしゃい」
「フォロチケ作りも兼ねて、一緒にライブするのである」
「いいけど、どんなライブにする?」
「一応、テーマは考えてきたんだけど…」
 まみが企画書と書かれたメモを出す。
『ダメモトで、光るかどうか試してみた』
 とある。
「あみの持っているプリパラのサイリウムコーデでライブしたら、コーデが光るかどうか試すのである」
「へぇ、面白そう!」
「れみがいないなら、3人でそらみスマイルのコーデで試そうか」
 あみの提案に、
「発起人はまみだから、らぁら。髪型が似てるあたしがそふぃ、あみはみれぃかな」
 と、ゆみが乗ってくる。

 予想していたとはいえ、サイリウムコーデが光るはずもなく、そのままライブが終了した。
 結果、『そらみスマイルのコスプレやってみた』になってしまった。

 仕事かられみが帰ってきた。
「ひどい!私が働いてる間にそんな面白いことやってたんだ…」
「すまなかった。我が早くあみを誘ったのである」
「ひどいですぅ!」
 れみがちょっと膨れて言う。一応、出合って日が浅いまみには丁寧に怒っている。
「あ、本筋からそれるんだけど…」
 ゆみが口を挟む。
「れみの「ですます」調の話し方、すごく可愛いなぁって思った」
「え?」
「確かに癒されるよね」
「なんでそんな話になるんですかぁ!」
「れみ、そのしゃべり方、なかなか「えもい」から、キャラにしちゃえば。わたしも推すよ」
「もう、あみまで…」
 場が和んだところで、
「れみ、心配無用である」
 まみが企画書を出す。
『3人でダメなら4人で光るかどうかリベンジしてみた』
 そういう問題か、と思いつつ、やってしまうのがわたし達だけど。
 そして、結果は当然『ドレッシングパフェ&ファルルのコスプレやってみた』に終わったのだけど。

「そういえば、コーデの貸し借りは出来るんだよね」
 あみが聞く。
「うん」
「じゃ、これの他の部分ってある?わたし、色違いの赤いボトムスはあるんだけど」
 あみが持っているのはブランドチャンネルのポップコーンショップグリーンシューズだった。
「店のフォロチケ交換ボードになぜかコーデを入れてる人がいて、これが複数入ってたから、わたしの手持ちのダブりと交換してみたんだけど」
「あ、あたしヘアアクセとボトムス、赤のシューズとボトムスあるよ」
 ゆみがそういってプリチケを出せば、まみも、
「我はヘアアクセとトップス、赤のヘアアクセとボトムスがある」
「残りは、赤のトップスですね。あ、私持ってます!」
 れみがたまたま補完できた。あみがたまたま交換したおかげで、2色揃った。
「それじゃ、最初にれみ抜きでやったお詫びに…」
「どういうことですか?」
「れみは赤のコーデで、わたし達3人は緑のコーデにしてね…」
 あみは言いかけて、ゆみ達に確認する。
「こっちの世界って『機動戦士ガンダム』ってアニメやってたりする?」
「え?うん。やってるけど…」
 ゆみが答えかけて気付く。
「シャア専用ザク!」
「なるほど!」
 爆笑する3人にれみはきょとんとしている。
「れみは知らなかったんだ…」
「ガンダムは聞いたことあるんですけどあんまり詳しくなくて。あみは東京でわざわざ見に行くくらい好きなやつですよね」
「うん。わたしが東京で見たのはもうちょっと新しい作品のガンダムなんだけど、これは最初のガンダムで、大雑把な説明をすれば、敵軍の隊長が乗ってるザクっていう兵器メカが、他のは緑の機体なんだけど、一つだけ赤いの」
「それって、敵に自分が隊長って判って不利なんじゃないですか?」
「そのシャアって隊長はむちゃくちゃ強いから大丈夫なんだ」
「なるほど、それで私だけ赤でシャア専用ザクって事ですね。『シャアザク』って言葉は聞いた事あったけど、勉強になりましたよ」
「じゃ、やる?」
「うん。私でも単語だけは聞いた事のある『シャア専用ザク』なら、興味持って閲覧してくれる人もいるでしょうしね」

 なんとなく、ネタに走ったライブばかりな気もするけど、結構ライブはこなした。おかげで、フォロチケもできて、4人は無事フォロトモになった。

「4人でやるのって楽しいね」
「うん!」
「ねぇ、ゆみ、まみ」
「何?」
「わたし達もあなた達のチャンネルユニットに参加させてもらえないかな」
「え?」
「わたし達だけでやるより、ずっといいものが作れる気がするんだ」
 あみの提案に、ゆみとまみは顔を見合わせ、
「もちろん大歓迎!そういえば4人とも名前が「○み」なんだよね」
「そういえばそうだね」
「ユニット名どうしよう。もともとのユニットも実は名無しなんだけど」
「ま、名前はおいおい考えるとして…」
「じゃ、決定。これからもよろしくね!」
「いつか、二人が元の世界に帰る時まで」
「はは、早く帰れるように願いながら、帰ってほしくなくなりそう。不思議な気持ち…」
 ゆみの一言にみんな、はっとした。
「そうだよね。向こうの世界には二人を待ってる人がいるんだよね」
「確かに。かけがえの無い親友たちがね」
「小説のとおりだとすると、ゆうきさんって人だよね」
「続編のみぃさん、さなえさんも、あと、あみのお姉さんもいるんだっけ」
「うーむ、なんかわたし達の事は知り尽くされてる感じだね。あのコたちもきっと二人と仲良くなれると思うよ」
「いつかあたし達も会ってみたいなぁ…」
「心配してるだろうなぁ…」
「そのためにも早く元の世界に帰る方法を見つけなきゃね」

「じゃ、結成記念ライブやるのである」
「いいね。せっかくだから、わたし達のでよければ、メガドレインってソフトで作ったチームコーデもあるけど」
「えっ?いいんですか?小説のパキるコーナーに載ってるコーデのカラバリですよね?」
 ゆみはつい敬語になってしまった。小説の読者からすれば、それは伝説のコーデみたいなものだ。
「別に、あのコたちも、喜びこそすれ、文句は言わないと思うよ」
「じゃ、お言葉に甘えて…さすがに、ゆうきさんのコーデは一番恐れ多いから、みぃさんのを借りていい…のかな」
「我はモノトーンが好きなので、さなえさんのを借りるのである…って、ちょっと緊張するよぉ…」
 そう言っていたまみが、結局いちばんノリノリでセンターを勤めたんだけど。

 その夜、寮の部屋で。
「あみはやっぱりあみだね」
 さすがに、れみもあみと二人の時はですます調は使っていない。
「どういう事?」
「異世界に来て、いつか帰る時に別れが来ると判っていても、どんどん絆を作ってしまう事」
「確かにね。実際、そこまで考えてなかったけど。でも、わたし達「みーんな友達、みーんなアイドル」のプリパラのある世界の人間だもの」
「そうだね。みんな友達…うん、そうだね」
「そろそろ寝ようか」
「だね。明日も店長から仕事くるだろうし」

「おやすみ」

 でも、これからどうなっていくんだろう。


今回のライブシーン
   
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