鹿 島 槍 岳 かしまやりがたけ(2889.1m)No.47

登 山 日 2005.08.10
コ ー ス ―猿倉〜白馬岳・唐松岳・五竜岳・鹿島槍岳・爺ヶ岳〜扇沢(2泊3日縦走)―

【第3日目】
キレット小屋6:00〜八峰キレット〜吊尾根(北峰分岐)6:56〜鹿島槍ヶ岳(北峰:2842m7:03 南峰:2889m7:33)〜布引岳(2683m)7:56〜冷池山荘(2410m)8:31〜赤岩尾根分岐8:49〜爺ヶ岳(北峰2631m 中峰2670m9:40 南峰2660m9:57)〜種池山荘(2450m)10:21(昼食)/11:13〜柏原新道登山口(扇沢 1422m)13:05

 【第1日目】(8/8)白馬岳へ
猿倉〜白馬尻〜大雪渓〜葱平〜お花畑〜頂上宿舎〜白馬山荘〜白馬岳〜杓子岳〜鑓ヶ岳〜鑓温泉分岐〜天狗山荘(テント泊)
 【第2日目】(8/9)五竜岳へ
天狗山荘〜天狗ノ頭〜不帰キレット〜唐松岳〜五竜山荘〜五竜岳〜八峰キレット・キレット小屋(泊・素泊)
所要時間 7時間05分
天   候 雨 一時 雷
メンバー 単独

 夜半からの雨と風は止みそうになく、恨めしそうに外を見つめていると、身支度を済ませた登山者が1人2人とキレット小屋を出発して行く。雨具を着てザックにはカバーを付けて、出発の準備は出来ているのだが、そのきっかけがつかめない。6時ジャストに意を決し、小屋のスタッフに出発の写真を撮ってもらうことで、外に出た。鹿島槍岳方面へ向かうため小屋の南側に廻り込むと、登山道はいきなり岩場の急登で始まって、目の前にはハシゴとクサリが現れた。雨と風に打たれて、クサリで身体を支えながら登って行くと、女性3人と擦れ違がった。


キレット小屋前の標識
【鹿島槍ヶ岳・八峰キレット・五龍岳】

鹿島槍ヶ岳北峰への分岐
ザックをここにデポして北峰の右方面へ

北峰山頂標柱

 幅の狭い岩場の道で、クサリを握り締めながら、抱き合うように身をかわす。彼女たちは、鹿島槍岳方面から来たのでなく、同じキレット小屋を出発したのだが、強風に身の危険を感じ戻って来たという。登山道は、足場の悪い岩場から稜線の西側斜面を行く道になって、直接風雨に晒されることになる。雨粒が雨具のフードを大音響で打ち、風は大波のように身体を揺すぶった。ハイマツの斜面歩きとガレの岩場登りを何度か繰り返えすと、鹿島槍岳北峰への分岐に到着。気が付けば、コースタイム2時間30分のところを1時間弱で飛ばして来て、いったい何人の登山者をパスしただろう・・・。ザックを分岐脇の岩陰にデポして、ガスで見えない北峰山頂を目指した。

 先発の登山者と擦れ違いながら、ザレの登山道をジグザグに登ると、程なく北峰の山頂に到着。耐風姿勢をとって、山頂の標柱を撮影するが、風に飛ばされそうだった。分岐まで戻る途中に、登って来る人から「山頂は?」と何度も尋ねられる。晴れていれば直ぐ先に見えるはずだが、風雨に加えてガスで視界が利かずに感覚が鈍るようで、進む方向さえも分からない人もいた。分岐でザックを回収してから吊尾根を辿り、もう少しで南峰への登りという時に、遠くで雷が鳴るのを聞く。さらに、南峰へのクサリ場を登っていると、今度は空が光って雷鳴が轟いた。

 岩陰に身を屈め、戻ろうか・進もうか・雷が通り過ぎるのを待とうか?と考えるが、今居るのはクサリ場である。雷が落ちたなら、クサリを伝わって感電死というシナリオが頭をよぎる。この時、昨日の五竜岳と先ほどの北峰の山頂標柱が、黒く煤け割れていたのは、雷が落ちたためだと確信した。もっと雷が近づいてくる前に、南峰を越えてしまおうと岩場を登るが、上空に雷鳴を聞いて上へ向かうことが、あんなにも怖いものだとは思わなかった。南峰の標柱をカメラに収めると、一目散に冷池山荘方面へ向けて下山。しかし、尾根上を下るため危険に変わりはなく、お経を唱えながら祈る気持ちで急いだ。


南峰山頂

布引岳山頂

登山者で混雑する冷池山荘内部

 困った時の神(仏)頼み・・・「不動明王御真言」を唱えながら下って行くと、低木の茂る窪地に身を伏せて避難する、男性2人と夫婦1組の4人を発見。息を整えるために小休止して、しばし雑談を交したが、先を急ぐことにして腰をあげると、私の後に男性2人が続いた。布引山を過ぎると若干斜面は急になるが、それでも3人は早足で黙々と高度を下げ、樹木の丈が高くなるころには雷鳴も遠退いていた。テン場を右に見て、しばらく下ると冷池山荘に到着。宿泊者は、雷のために足止めされていたようで、これから出発する人であふれていた。


爺ヶ岳中峰

爺ヶ岳南峰

種池山荘

 混雑する山小屋での休憩を諦めて、樹林の中を登り返えして行くと、赤岩尾根が左から交わる冷乗越(赤岩尾根分岐)に到着。すでに雷の心配はなくなったが、まだ雨は降り続けていた。分岐を直進してハイマツの間を緩やかに登って行くと爺ヶ岳の北峰、その次の中峰では窪地から一緒に下山する男性と写真を撮りあう。南峰を通過して、ハイマツ帯の幅の広い稜線を下って行くと、種池山荘が現れる。山荘内は混みあっていたが、何とか場所を確保して昼食をとることができて、重いザックを下ろし雨具を脱いだ解放感から長居をしてしまった。

 休憩中に雨は止んで、良く整備された柏原新道を、扇沢へと下山して行く。写真を撮ろうとデジカメを取り出すと、雨の中で撮影(山頂標柱しか撮る余裕がなかった・・・)していたので、湿気で操作不能になっていた。高度を下げていくと日差しも射してきて、あの雷の中の登山が嘘のように感じる。山荘から2時間弱で扇沢に到着して、駐車場では愛車が待っていた。