涙一粒 4











真田が来なくなった
まあ、当然のことだろう
それなのに、何を期待しているのか菓子を絶やすことは無い

「おぅ、毛利」

「…チッ」

図々しくも部屋に入ってくる長曽我部に舌打ちし睨み付ける

「何用ぞ
貴様の顔を見ていると反吐が出る
用が済み次第早々に立ち去るが良い」

「相変わらずえれぇ言いようだな…
なぁお前よ、真田と喧嘩でもしたのか?」

「…………貴様には関係の無いことよ」

「…なら、真田が塞ぎ込んでんのも関係ねぇか?」

「…」

「…よっと」

「!
座るでないわ!」

あぐらをかき、真っ直ぐに見詰めてくる長曽我部に唇を噛み締める

この男は欲しくも無い言葉ばかりを投げる
いつもいつも、キラキラとした世界から我を見る
我が斬り捨てたものばかりを、
わざわざ拾ってきては我の前に突きつける

「何聞いても自分が悪いの一点張りで菓子も食わねぇ
……寂しそうな顔してたぜ?」

「…黙れ」

「…関係無いなら、何でてめぇもそんな顔してやがんだ」

「…我がどんな顔をしようとっ」

「関係無い、か?
そんな泣きそうな顔で言われたって説得力なんかねぇぞ」

「…っ!
煩いっ!黙れっ!!」

我の言葉にため息を吐きながら長曽我部が立ち上がる
開かれた襖から入る光を忌々しく思った

「喧嘩の原因なんてどうだっていいがよぉ
お前等がそんなんじゃこっちも調子出ねぇんだ」

俯いたまま視線だけを向ければ、
困ったような顔で長曽我部が笑っている

「どっちが悪いとかはどうでもいいんだ
自分が、自分で悪いと思ったら”ごめんなさい”だ
仲直りなんて、頭で思うよりも簡単だぜ?
…じゃ、またな」

いつだってあの男は腹立たしい
分かりきったことを改めて口にする
それがどれだけ困難なことかを、知りもしないで

「…………それ位、当に知っておる」

閉められた襖に投げかけた声は、
その向こうの光にはいつまでも届かないと分かっているというのに






←/3 /5→

←寄せ集めの話
←BL
←ばさら
←めいん
←top