淫獣とご主人様 2











「…元就まだかなぁ」

元就は”会社”に行っている
毎朝毎朝決まった時間に出かけていく
それが元親にはとても不服だった

今まで元親を飼っていた人たちは元親いわく”太ってて臭くて怖い人”
だがまぁ酔狂で元親を飼っていたりオモチャにしていただけはあり、
そこそこの金と余裕のある者ばかりだったのだ
だから一日中遊ばれていたり、慰み者になったりしていたわけだ

元親は一人が嫌いだ
みんないつかは飽きてぽいされると思っている
だから、ぽいされるまでは一緒に居たいと思うのだ

一日中バイブを突っ込まれていたり、失神するまで殴られるのは好きではない
でも、それで側に居てくれるならそれでいいやと思っていたりする

「………元就ぃ」

今までの環境がどれだけ劣悪かを元親は分かっていない
だって、今まで与えられるのは場所は違えどどれもみんな劣悪でしかなかったから、
臭い人が変わった、くらいの認識しか元親には無いのだ

そんな中拾ってくれたのは奇跡のようにきれいな元就だった

太ってないし、臭くない
それだけでも元親の根底を揺るがすような一大事だった
その上痛いことも苦しいことも無いのだ
最早元親は元就が神様にでも見えるようだった

きれいな元就が触ってくれる
可愛いと言いキスしてくれる
たくさん気持ちいいことをしてくれる

優しく笑ってくれる
一緒にお風呂に入ってきれいにしてくれる
おいしいご飯を作ってくれる

元親は天国ってここにあったんだ、と常々思っているのだ

だがいかんせん元就は至極全うな社会人だ
少々性格に難ありだが、毎日しっかり会社に通う
そうして留守を待ちながら一日の大半を一人で過ごすことは元親にはとても恐ろしかった

「………何だっけ、えぇと、さみしい?
…ちかがもっといい子なら元就もっと一緒に居てくれるのかなぁ?」

物言わぬ観葉植物をつんつんとつつきながら元親はひとりごちた
植物が返事をしないことぐらいお馬鹿な元親にだって分かっている
でも、ひとりぼっちで静かな部屋の中に居るのは元親には耐えがたかったのだ

「…お天気いいなぁ
元就喜んでるかな?喜んでるといいな」

窓からさんさんと降り注ぐ日差しに目を細め元親の独り言は止まらない
何かしゃべっていないと寂しくて寂しくて心臓が止まってしまうような気がした

「…元就、元就
………さみしいなぁ」

ソファーの上で膝を抱えて丸くなりここに居ない元就を呼ぶ

ぽたぽたと膝に落ちた涙をぼんやりと眺めながら、
元親はやっぱり元就が大好きだなぁと思っていた






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