嘘つきメランコリー 9











三成と並び歩くだけで、見る物全てに光が差すようだ
今までにこれほど世界が美しく見えたことがあっただろうか?

「刑部、大丈夫か?」

「ヒヒッ、ぬしはほんに優しいなァ」

「…ふん」

杖とは反対の腕を取り、
われの足に負担を掛けぬように気づかう三成に笑ってやる

「ほれ、手を出しやれ」

腕を手繰りゆるり繋いだ手
それだけで、三成には春の日差しのように柔らかな笑みが咲く

「ぬしはほんに愛らしいの」

「あっ、愛らしくなどないっ!」

「ヒヒヒッ、そういう所がまた愛らしいのよ」

「〜〜〜っ!」

手を握り締め、真っ赤な顔をする三成を愛しく思う
われの言葉に一喜一憂することが嬉しい
三成の中で、われがどれだけ大きいのかが分かる
それが、堪らなく幸福だと思うのだ

「…ああ、数日中には雨が降りやるなァ」

「そうなのか?」

「あれを見やれ、いわし雲が出ておろ?
先日はおぼろ雲が出ておったゆえ、
これらが順繰りに見られると雨が降りやすいのよ」

「…刑部は、何でも知っているな」

「何でもは分からぬわ」

「少なくとも、私より沢山のことを知っている
その知識を活用出来るのはとてもすごいことだと思う」

真剣な顔で感心する三成に何ともきまりが悪くなる
これしきのことでこうも目を輝かせられるとは思わなんだ

「ぬしはわれを買い被りすぎよ」

「そんなことは無い!
刑部が過小評価し過ぎなだけだ!」

「やめよヤメヨ
気恥ずかしくて堪らぬわ」

「…照れているのか?」

まじまじと顔を見詰めて来る三成の手を引き、
その唇に触れるだけの口付けを落としてやる

「…っ」

「…ヒヒッ、すまぬすまぬ
ぬしの瞳が大層美しいゆえ、引き込まれてしもうたわ」

「……刑部」

「如何した?ヒヒヒッ!」

「…〜〜〜何でもないっ」

潤む瞳でわれを見る三成をからかってやれば、
そっぽを向き、頬を赤く染めたまま眉をしかめる

「…愉しみは夜に取っておくものよ」

「っ!」

耳元でそうささやいてやれば、首の後ろまでも赤く染める

三成に必要とされるだけで、今までの生涯すべてが報われたように感じるのだ






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