嘘つきメランコリー
9.5
刑部が手を繋いでくれた
今まで人目があるところでは頑ななまでに、
決して触れようとしなかった刑部が、自分から私の手を取ってくれた
それが嬉しくて堪らない
底の無い沼のように、どこまでも終わりが無く甘やかされることも、
口に出すことも無い願いを叶えてくれることも、
優しく穏やかな顔で微笑んでくれることも、
全てが、私を愛してくれているからだと思える
初めての硬くごつごつした膝枕
頭を撫でられるくすぐったさ
同じ想いで隣を歩ける心地良さ
どれもこれもが幸せで、
宙に浮く雲のように心がふわふわと浮付いている
好きと言えば好きだと返って来る悦び
手が触れれば握り返してくれる優しさ
満たされている
これほどに穏やかな日々が今までにあっただろうか?
寺小姓時代の冷ややかな記憶さえも温められる
秀吉様と半兵衛様に取り立てていただいてからの鮮やかな日々も、
全てはこの平穏の為の足掛かりに過ぎなかったのだとすら思う
それほどまでに、満ち足りていると思える
刑部は私のものだ
私だけのものだと、大声で叫んでしまいたい
そうして同時に、私も刑部のものだと叫びたい
全ての者にこの幸せを知らしめてやりたい
刑部に手を出すことは許さないと見せ付けてやりたい
後は、そう
私の大切な刑部を悪く言う者が消え去ればいい
刑部が人目を気にせず、私の立場を気にせず、
あるがままに愛してくれるためには、必要不可欠なことだ
そうすれば、誰も私たちの邪魔をしなくなる
早く早く、その日が来るように、
いくらでもその薄汚い血でこの手を汚してやる
秀吉様が、半兵衛様が、刑部が、
ここに居てくれるなら、私はそれだけでいいのだから
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