嘘つきメランコリー
6
「三成…
入っても、良いか…?」
ぴたりと閉まった襖の前で、
つい先日訪れた時もこんな心持だったと思いながら声をかける
「……」
内から開かれた襖から覗く三成は、
ろくに眠っていないのか深い隈をこしらえていた
「三成…」
「入ればいい…」
掠れた声でそれだけポツリと呟くと、
真っ暗な部屋の中に三成は入っていった
その後を追い、部屋の中に入る
「三成」
「刑部、私はっ、刑部が好きだ…」
こちらを振り返ることも無く、
部屋の中に立ち尽くしたまま三成が言う
「刑部、なぜ私に触った?
嫌いなら初めからっ、初めから、優しくなどしなければいいだろう?」
掠れた声が震え、泣いていることが分かる
結局三成を傷付けてしまったと、不甲斐なさに拳を握り締めた
「刑部、私が嫌いか…?」
こちらを振り返った三成の頬を伝う涙が、
月明かりに照らされてキラキラと輝いていた
あまりにも美しい光景に、
状況も忘れ息を飲み魅入ってしまった
「嫌いなら、はっきり言え
刑部が望むのなら、極力顔を合わせないよう努力もする…
だから、どうか、答えて欲しい…」
涙を流しながら、声を上げまいと必死に唇を噛み締め、
揺らぐ瞳で、眼を逸らすまいとこちらを見詰める三成を抱きしめた
「…三成、すまぬ
われは臆病だった
己が傷付くことを恐れ、ぬしをひどく傷付けた
……三成、われはぬしを好いておる
許されるならば、どうか手を取らせて欲しい」
真っ直ぐに見詰めてやれば、
顔を歪め胸に飛び込んでくる温もり
愛しい三成の香りに目を閉じ、
腕の中に柔らかな温もりを閉じ込めた
「刑部、刑部っ……
私を裏切るなっ、拒否は許さないっ!」
「ああ、われは永劫にぬしと共にあろ
ぬしを、ぬしだけを、生涯愛し続けてやろ…」
胸の中で泣きじゃくる三成に、われはまことの愛を誓った
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