嘘つきメランコリー
6.5
刑部が好きだと言ってくれた
私を、生涯愛すと言ってくれた
夢のようだ
あの日、刑部が私の部屋から去ったあの瞬間
手を伸ばしても、声を絞っても、振り向くことの無かったあの日
私は死んでしまいたかった
刑部が私を見てくれないと思い、
私は愛されていないのだと思い、
そのまま死んでしまおうと思った
だが、どうせ死ぬのならば、
今まで刑部を嘲笑った者共を、
蔑み、嫌悪し、離れていった者共を、
この手で屠ってからにしようと決めた
私の知っている言葉を叫んだ気がする
私の知っている者の名を出された気がする
私は、何も感じないまま刃を振り下ろした
真っ赤な鮮血をうっとおしいと感じた
また刃を磨かなくてはと思った
ただ、それだけだった
ああ、だが今、刑部が私を好きだと言ってくれた
この世界は光に満ち溢れているようだ
全てに祝福を感じる
全てに許されているように感じる
私は刑部に愛されているのだ
この腕の温かさ
この胸一杯になるような刑部の香り
目の前にある、愛しい刑部の顔
私は何と幸せなのだろう
秀吉様の、半兵衛様の為に尽くすことが出来、
その上刑部に生涯の愛を誓ってもらえるなど…
私の生涯は秀吉様の御為に捧げると決めた
それなのに、それすら揺らいでしまいそうな程、
刑部にこの命を捧げたいと思ってしまう
ああ、幸せで気が狂いそうだ
刑部の香りに包まれ、温かな腕に抱き締められ、
私はこれ以上の幸福を知らない
何と、何と満ち満ちた世界だろう
ああ、この世界中に私と刑部だけがいればいいのに…
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