嘘つきメランコリー 5











いつもと変わらぬ朝を迎えた
いつもと変わらぬように着替えをした
いつもと変わらぬように朝餉を取った
いつもと変わらぬように政務をこなした
いつもと変わらぬように夕餉を取った
いつもと変わらぬまま夜が来た

いつもと違い、一度も三成と会う事はなかった

書類を持って来る者が三成ではなかった
茶を持ち、休息を取れと怒鳴り込んで来ることがなかった
急に押しかけ、太閤や軍師殿を褒め上げることもなかった

今まで毎日のように顔を合わせていたのは、
三成がわれに会いに来てくれていたからだと知った

そうして思い返してみれば、
今までどれ程に三成がわれの身を気にしてくれていたかを知った

何だかんだと理由を付けては部屋に押しかけ、
われの体調を確かめていく
他の誰も気付かぬ体調の悪さにいち早く気付く
そうして世話焼き女房の如く、
あれやこれやと甲斐甲斐しく世話をしては嬉しそうに笑っていた

どれだけの不安を抱えてわれに好きだと伝えていたのだろう

今までのらりくらりと逃げてきたわれに、
飽くことも、呆れることも無く、何度も何度も…

「……三成」

部屋の中に響いた声は重く、苦しく胸につかえた
深いため息を吐き出して腰を上げる

会った所で上手く言葉に出来るかは分からない

それでも、謝罪とこの心を伝えたかった






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