嘘つきメランコリー 2











政務も一段落し茶を啜っている所に、新たな書類を手にした三成が訪れた

「休んでいる所にすまない」

「いやナニ、かまわぬ」

書類を渡し終えても立ち去らない三成に首を傾げる

「…刑部」

「如何した、三成」

「私は、刑部が好きだ」

「…ああ、知っておる」

「刑部は、…っ、私が、好きか?」

感情を押し殺した声で、三成がそう呟く

切なそうに細められた瞳を見つめながら、
もう自分も三成も騙すことは出来ないかと、そっと目を伏せ息を詰める

「……今晩、部屋で待っている」

「…ああ」

部屋を後にする三成の後姿が見えなくなると、
今まで無意識に止めていた息を吐き出した

「…年貢の納め時、ということかの」

ぽつりと零した軽口は、一つも笑えないまま宙に浮いた




三成のもとへ向かう決心がつかず、
一人ぐるぐると思い悩みながらも、
ようやく部屋の前に着いたのは夜半になった頃だった

「…刑部」

強い力で引き寄せられ、そのまま唇が重なった

初めての三成からの口付けはひどく甘いものだった

「っ、ん…」

貪るように唇が触れ合う
躊躇いがちに差し入れられた舌にくらくらと脳が揺れた気がした

「は、ぁ…」

離れた唇を名残惜しく思いながら、
繋がる銀の糸にもどかしい恍惚を覚えた

「…三成、「…すまない」

われの言葉を遮り、謝罪の言葉を口にしたまま、
きつくきつく抱きしめられる

「…少しだけ、私の好きにさせろ」

「……」

掠れた声に頷いてやれば、安堵したようなため息が聞こえた

「…好きだ、刑部」

耳元で、背筋が粟立つような甘い息を吐き、
三成の手に体をまさぐられる

頬を伝い胸元へ
背中から腰へ
腕から指先へ
腹から腿へ

震える指先で恐る恐る、といった様子で触れる

不安げにこちらを窺うように視線を寄こし、
振り払われないことを確かめてはまた触れる

たどたどしくぎこちない指先

愛撫とは違うと分かっているというのに、
好いた者に触れられているというそれだけで、
興奮は高まり雄がその存在を主張し始める

「ああ、刑部…」

「…っ!」

嬉しそうに頬を弛ませ、
着流しの上から優しく、壊れ物でも扱うかのように手を添えられた

そのまま形をなぞる様に、何度も三成の指が往復する

弱く、ささやか過ぎる刺激にもどかしさが募る
三成の白く美しい細い指が、
布越しであれ、われの雄をなぞっているという事に興奮が高まる

”生殺し”という言葉を身をもって思い知った

「…っ、刑部」

われの体をまさぐりながら三成自身も興奮しているのか、
先程よりも荒い息を吐き出し、三成が口付けを落とす

「んっ…」

われが今まで三成にしてきたように、
下唇を舐め、歯の裏を舐め、絡み合った舌を強く吸われる

「ふ、っ…」

離される濡れた唇に目を奪われる
紅潮した頬と相俟って、ひどく扇情的な眺めだった

きつくきつく握られた手が、絡み合った指先が、
痛みを伴う程に、三成に求められているのだと実感する

抱きしめる三成の鼓動を聞いているだけで、涙が溢れそうだった






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