嘘つきメランコリー 1











好きと言われるほどに突き放したいと思う
言葉巧みに煙に巻き、くるくると螺旋のように回り続ける

それでいいのだ

それ以上など、いらないのだ

「っ、刑部っ」

大きく足を開き、雄から汁を零す三成を後ろから抱え込み、
胸を、腹を、太腿を撫で、耳を、首筋を、振り向いた唇を舐め、
その度に身を震わせ上げられる蕩けるような甘い嬌声だけに耳を傾ける

「ふっ、あぁっ!」

紅潮する肌は蝋燭の明かりに照らされ妖艶に身悶える
熱に浮かされた瞳は快感だけを追い求め潤んでいる

「んんっ、刑部、あっ、んっ!」

雄を扱きながら尻の穴をぐちゅぐちゅと掻き混ぜれば、
放すまいとするかのようにきつく締め付けてくる

「ぅ、あっ!刑部…刑部っ…」

われの首に腕を回し、口付けをねだる三成の愛らしいことこの上ない

絡み合う舌に混ざる唾液
快感を主張し続ける固い雄
熱く滾った身の内

涙に濡れた瞳は輝き、肌は汗ばんでいる
頬に当たる銀髪はサラサラと流れ、
三成の香りだけがむせ返るほどに感じられる

幸福だ、と思う心を見ないように目を逸らす

「んっ!刑部っ、出る…ッ!」

「…好きなだけイきやれ、ヒヒッ」

「ッ!!…ぅ、あ……」

どろりとした白濁を飛び散らせ、
放心したように力の抜けた三成を抱きしめる

「ぬしはほんに愛らしい」

「…刑部の可愛いの基準が分からない」

前を向いたままぐりぐりと頭をすり寄せてくる

「そういう行動も全て、ぬしの愛らしいところよなァ」

三成の体に飛び散った精を手拭いで拭き取り、
甘い余韻に浸りながら意味の無い睦言を交わす

「ほれ、明日も早い
そろそろ寝やるぞ、三成よ」

「…ああ」

不満そうな顔をする三成に着流しを手渡してやれば、
渋々といった様子で袖を通した

その姿を見届け、部屋を出るために襖に手をかける

「…好きだ」

「ヒヒッ、知っておるわ」

「……」

「では、われは戻るゆえ風邪などひかぬようにな」

「……ああ、刑部もな」

「あいあい、心しよ」

今まで何度したかも分からないやり取りを繰り返し、
いつものように三成の部屋を後にする

体を繋げることも無く、好きだと口にすることも無い

ただ、恋しくてたまらなくなる度に三成の元を訪れる

必要以上に触れなければ、想いを口にしなければ、
誤魔化していられると、そう思っていた

一度でも手にしてしまえば、それはもう手放し難いものになる

枷になることは望まないのに、どうしても枷になってしまう

「…いつまで、誤魔化せるものか」

今別れたばかりだというのに、もう顔を見たいと思う
そう思った瞬間から、もう誤魔化しきれていないと気付いている

それでも、まだ枷になる覚悟が出来ないわれは臆病者だ

三成の側に居た後の耐え難い孤独を思いため息を吐く

自室の襖はやけに重く感じられた






/2→

←三成部屋
←BL
←ばさら
←めいん
←top