落ちて溺れて魅せられて
3
刑部に穴蔵に閉じ込められた
今までと場所が違うだけだと思おうとした
だが、誰も居ない小生一人の空間は、
気が違いそうになる程に孤独で満たされていた
だから、それだから、
この状況を受け入れてしまうのだと思った
そう思おうとした
小生の気が確かなら、
例え女っ気の無いこの空間だろうと、
憎き凶王にほだされるなど、有りはしないのだ!
「今日こそは、今日こそは、今日こそは…」
「官兵衛、何をブツブツと言っている?」
「げっ!」
着流しで現れた三成に息を飲み、
今まで自分に言い聞かせていた言葉を止められる
「みっ、三成っ!
な、何をしに来たぁ!」
「何を?
そんなことは貴様が一番よく分かっているだろう」
「うぐぐっ…」
シュルリ――と帯を解き、
惜しげも無く裸体を晒した三成に魅入ってしまう
無駄な肉の付いていない肢体
真っ直ぐに、サラサラと零れる髪
伸ばされた細く白い指先
見る度に認識させられる、
小生には、この男に抗う術など無いのだと…
「官兵衛、早く触れろ…」
「……っ、三成」
三成の甘く蕩ける声音に惑わされる
小生がどんなに抗おうと思ったところで、
それは無力な抵抗にしかならないと叩き付けられる
「……あぁ」
「んっ、官、兵衛…」
最初の内は懐柔のつもりかと疑っていた
ほだされた振りをしてやろうと思っていた
だが、何度も三成に触れるうちに、
小生の心は、どうしようもなく囚われてしまった
小生の肌を愛おしそうに撫でる指先が、
端整な顔が快感に歪むさまが、
腰に絡みつき離すまいとする足が、
浮付いた瞳で口付けをせがむ姿が、
狂おしく愛おしいと思うようになるなんて…
「三成…」
「っ、かん、べ…気持ち、いいっ!」
「…そうかいっ、小生も、気持ちいいさっ!」
「あっ、んんぅっ!」
すがるように伸ばされた手が、
小生の背中に回され、きつくきつく抱きしめられる
ああ、こんなことをするな
誤解しちまうじゃないか
お前さんが、小生を好きかもしれないなんて
「ぅあっ!ああッ!かんべっ、かんべぇっ!」
頼むから、そんなに切ない声で呼ばんでくれよ
「ふっ、あ、あっ!イくッ、かんべっ、イくぅッッ!!」
「っ、三成っ、……っくぅ」
小生までお前さんが好きかもしれないと、勘違いしちまうじゃないか
お前さんはこのまま戻って行くんだろう?
いつもみたいに、振り返ることも無く、
小生の手の届かない場所に帰っていくんだ
それでも、小生はこの快楽から逃げられる方法を知らん
三成をこの腕の中に閉じ込めておける方法も、知らんのだ
一度くらい、三成と朝を迎えてみたいもんだがね
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