黒 い 炎 3











三成がじっと見つめてくる
誘うように、いや実際誘っているのだろうが
頬を撫でる手のひらは艶かしい

「三成…」

自らの熱が上がるのが分かる
先程吐き出したばかりだというのに、
単純な自分が笑えてくる

「…お前を、壊してしまうかもしれない」

「だから何だ」

そんなことに興味は無いとでも言いたげに細められる瞳
その奥で燻る欲の色

「ワシは自分を止められる自信が無い」

「止める必要があるのか?」

怪訝な顔をする三成にため息を吐く

三成は知らないからそうしていられるのだろう
このどす黒い感情を
こんなにも純粋な欲を
この上ない激しい愛を

「…恐怖はある
だが、貴様が与えるのならそれすらも甘美だ」

少し俯き微かに笑う
それがあまりに妖艶で眩暈がした

「愛している、三成」

噛み付くように口付ける

三成の薄い唇から漏れる吐息も飲み込んで舌を絡める
ねっとりと歯列をなぞればくぐもった甘い声
震える睫毛は初な乙女のようだ
三成から差し込まれている舌をやわやわと甘噛みすれば
くすぐったいのか口内を逃げ惑う
それを逃がさないように執拗に追いかける
薄らと開かれた金緑色の瞳に
躊躇うような自分の顔が見て取れた

「んんっ、いえ、やす…」

解放してやれば涙を溜めて見上げてくる

「三成、すまない」

もう戻れないと思った

自分の熱が、欲が、三成に絡み付いてもう離れない

「愛してる…」




頬を染めたままの三成を布団に押し倒す
僅かに目を見開き、それでも抵抗は無い

「家康…」

怯えと興奮の色を映し三成が見つめる
硬く縮こまった体に唇を寄せる

「んっ…」

白い肌に舌を這わせると、
三成の香りにくらくらした

目に付く部分を嘗め回し、赤く色付く飾りに触れる
何の戸惑いも無く強く強く噛み締めた

「う゛あっっ…!」

千切れそうな程に噛んだ乳首からは真っ赤な血が滲んでいる

「…三成」

一滴も残すまいと丹念に嘗め取ってやれば
微かに甘く残る鉄の味に欲情する

何の前触れも無く三成の穴に雄を差し込む
先程まで交わっていたそこはさしたる抵抗も無く受け入れてくる
だが受け入れる三成は痛みからか眉を寄せている

「痛いか?」

「…だいじょ、ぶだ」

不規則な呼吸を整えるように息を吐く三成の頬をはたく

口の端から零れた血
赤く染まる頬
驚愕したように開かれた瞳

「なら、もっと痛くしないとな」

そう笑ってやれば三成の穴がきゅうっと締まった

「家康…」

怯えた瞳で、震える声で三成が呼んでいる

布団の上に手首を縫い付け、
その声すらも己の唇で塞ぐ

絡んでくる舌を噛みながら、
激しく雄を抜き差しすれば三成の目尻から涙が零れた

三成のくぐもった嗚咽混じりの嬌声
ぎゅうぎゅうと締め上げてくる体内
止まることの無い涙

なんて可愛いのだろう
なんて美しいのだろう

三成の口内からは血の味しかしない

「はっ、三成っ…」

三成の体などお構い無しに腰を振る
触れ合った部分からパンパンと鳴る肉の音に薄く笑った

「うっ、んんっ…」

涎を、涙を、嬌声を零しながら
三成がしがみついて来る

あまりにも滑りのいい三成の穴をちらりと見れば
先程吐き出した欲と三成の血が交じり合って流れ出している

本当になんて愛おしいのだろう

もっと、痛めつけたくなってしまう

仰け反る三成の白い首に手を伸ばす

「三成…」

少しずつゆっくりと力を込める

徐々に赤黒く染まっていく顔
己の手で括れていく首
空ろな瞳
止まらない涙と唾液

力を強めれば一層きつくなった穴に欲を吐き出す

三成も虚空を見たまま体を震わせた




「大丈夫か?」

むせながら大きく息をする三成に声を掛ける

首には赤く手のひらの痕が残っている
乳首からは乾きかけた血が滲む

「…あぁっ」

もっと痛めつけたい
もっと悲鳴が聞きたい
泣きじゃくってすがって欲しい

これだけのことしかしていないのに、
赤く残る手の痕も、
滲んだ血も、
涎と涙のあとも、
こんなにも美しいなんて

「家康…」

不安そうに抱きついてくる三成を抱きしめる

細い腰に白い肌
馨しい三成の香り

「三成…」

ぎゅうぎゅうと頭を押し付けてくる三成に
多少の罪悪感を感じる

「なぜ…、良いと言っているのに…」

気付けばぐすぐすと三成が鼻をすすっている

「我慢なんて、しなくていい」

真っ直ぐに三成に見つめられて息が出来なかった

「思うままに、愛せばいい」

その言葉に苦笑して三成の頭を撫でる

「初めから無理はさせたくない
時間なんていくらでもあるんだ、ゆっくりでいいさ」

不満そうな顔をしながらも頷いてくれた三成に毛布を掛けると、
冷たさに身を震わせてため息を吐いた

「おやすみ、三成」

未だ零れる涙を舌先で掬ってやると、
くすぐったそうに身をよじり、胸元に顔を寄せてくる

「…次は加減などいらないからな」

厳しい口調でそれだけ言うと安らかな寝息が聞こえてくる

「あぁ」

加減など、今日の三成を見て無理だと思った

首を絞められて歪んだ赤黒い顔
それを見て浅ましく欲情したのだ

もう、我慢なんて出来そうに無い

眉をしかめて、涙を零して、
嬌声と涎を垂れ流す三成を見てしまったのだ

そんな三成に今までに無く興奮したのだ

戻ることなど不可能だ

だって、こんなにも愛しているんだ




黒い炎は燃え盛る






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