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ひどく焦った顔で、息を切らせて走る三成に捕まった。
その後ろから迫る狂気的な目をした女の集団。
何の説明がなくとも、これがまずい状況だということは分かる。

「…、逃げるぞッ!」

顔が引き攣るのを自覚しながら、三成の手を取り駆けだした。

街の中を右へ左へと走り回る。
一人きりで一体どれほど逃げ回ったのか、背後からは三成の荒い息遣いが聞こえる。

(これ以上は、厳しいか…ッ)

速度の落ちた三成に、これ以上の逃走は無理だと判断する。
だが、身を隠せる場所のあてなどない。
夢中で走り回ったせいで、ここがどこなのかさえもう分からなかった。

「先に行けッ!」

三成の手を放し、迫り来る女たちの前に立ち塞がる。

「…っ、もと、ちかっ」

「いいから、行け!」

息も切れ切れな三成の背中を押し、先へ進むことをうながす。
何度か振り返る気配はあったが、三成は大人しく行ったようだった。

「ちょっとどきなさいよっ!」

「邪魔よっ!」

「ああ、行っちゃうっ!」

口々に勝手なことを言いながら、我先にと進もうとする女たちを押し留める。
ぐいぐいと押される圧力は少しの加減もなく、
お前らそれでも本当に女かと言いたくなるほどである。

「うるせぇっ!一歩でも進ませっかよお!」

「このっ、くそ男ぉおおっ!」

「あ、曲がっちゃった!」

「……アレ、あたし何してんだろ?」

「……私、買い物の途中だった気が」

一人の女の声を皮切りに、皆我に返ったように一瞬で大人しくなる。
まるで自分が何をしていたのか分かっていないような顔で、
皆そろって不思議そうに首をかしげている。

(………まじかよ)

女たちはあれだけ熱狂的に追いすがっていたというのに、
夢から覚めたようにあっさりと散り散りに去って行く。

見ず知らずの女たちから逃げる為に散々走り回って、
身を挺してまで何とかしようとした事態が一瞬で、急速に終わっていく。

狂信的に、熱狂的にギラついていた女たちの目。
三成の姿が見えなくなった途端に我に返った女たち。
自分は淫魔だと言っていた三成の言葉。

(………アイツが言ってたこと、本当なのかよ)

到底信じられることではない事柄。
だが、信じざるを得ない状況。
茫然と女たちの背中を見送って、はっと気付く。

「アイツ、家の鍵かけてねぇだろ!」

くそっ、と毒づき三成を追うために走り出した。






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