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迷いながらもどうにかこうにか元親の家へと辿り着いた。
疲れのままに玄関先で倒れ込む。

先に行けと女たちの前に立ちはだかった後ろ姿を思い返す。

秀吉様ほどではないがしっかりと筋肉の付いた背だった。
自分や半兵衛様と同じく真白い髪。だが、自分とは違いふわふわとしたそれ。
出会って間もない自分をかばい、身を盾にしてくれたこと。

「……………惚れるだろうがっ!」

呼吸も落ち着いたというのに、先ほどの元親の姿を思い返せば、
自然と脈が速くなり顔に血が集まり熱いと感じる。

手のひらで顔を覆いごろごろとのた打ち回る。
声にならない声を噛み殺し、浮つく心を静めようとする。

だが、何一つ上手くいかない。

外からバタバタと駆ける音がしたと思えば、勢いよく扉が開かれる。
そうして現れた元親を視界に入れただけで、
思い返す比ではなく心が高鳴るのだから始末に負えないと思った。

「鍵!三成、外っ、出る時、鍵……」

荒い呼吸を繰り返し、途切れ途切れに言葉を紡ぐ元親に、
ああ自分を追ってここまで走ってきたのかと思うともう叫びだしたくなってしまう。
そして気付いたことは元親が名で呼んでくれているという事実。

「元親っ!」

「…な、んだ」

「好きだ!婚姻を結べ!」

「…………………あ゛?」

眉をしかめながら真っ直ぐに私の目を見る元親にどんどん鼓動が高鳴っていく。
その澄んだ海色の瞳に自分が映っていると思うだけで、
心臓がぎゅうとわし掴まれたようになる。

「私はっ、貴様が好きだっ!」

こんなに優しくて、温かくて、馬鹿な人はいない。
器用で、面倒見がよくて、はずれと分かっていても貧乏くじを引くような男だ。

出会って間もない、人の常識では測れないような私を、
面倒事だと分かり切っているのに追い出そうともしない男だ。

どうしようもない程馬鹿で、どこまでも優しい。

「私を愛せ、元親
この世界中で誰よりも幸せにしてやる」






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