手記 3











主が怒っていた
理由は分からないけれど、
官兵衛という人物に対して怒っていることは分かった
主の害になるのなら殺したほうが良いのだろうか?
だが、もしそれで主の立場が悪くなるのはいけない
俺はどうすればいいのだろう
命令をくれたら何だってするのに
今の俺にはただ撫でられることしか出来ない
主は俺の背を撫でて気が落ち着いたのか、
秀吉様と半兵衛様の話を始めた
「素晴らしい、さすがは天を統べるに値する御方」と言っていた
主の心が穏やかになったのならそれでいいと思う
俺は主の為に何が出来るのだろう
何だか胸の辺りがもやもやする
病にはかかっていない筈だが、よく分からない
主と共に眠ることにする


主が出かけていった
敵情視察らしい
二日程で帰ってくる予定だと言っていた
二日も主に会うことが出来ない
寂しいが来る
嫌だ
真っ暗で、寒くて、どうしていいか分からなくなる
主が飯はきちんと食えと言っていたから、
つっかえながらも飯を押し込んだ
主の香りの残る布団に潜り込んで眠る
何だかすごく苦しい
俺は病にかかったのだろうか?


今日も主は居ない
予定通りなら明日には帰ってくる
昨日より苦しさは無くなった
だが、やはり寂しいは無くならない
時間が過ぎるのが遅い
寂しい
眼から水が零れた
涙、というものだったと思う
なぜ涙が出るのだろう?
早く主に会いたい


主が帰ってきた
知らぬ間に尻尾を振っていた
撫でてくれた
抱きしめてくれた
何だかまた涙が出そうになった
主がため息を吐いた
苦しそうな顔をしていた
刑部を傷付けてしまったと言っていた
どうやら、刑部は主を庇って傷を負ったらしい
主の眼から涙が零れていた
苦しくて苦しくて、どうしたらいいのか分からなかった
泣き止んで欲しくて頬を伝う涙を舐めた
驚いた顔をして抱きしめてくれた
「ありがとう」と強く抱きしめてくれた
主が泣き止んでくれて良かった
今日は主と一緒に眠れる
嬉しい


主の涙は嫌だ
笑っていて欲しい
俺の寂しいよりもずっと嫌だ
苦しくなる
もっともっと笑っていて欲しい
主が笑っていると嬉しいで一杯になる
どうしたら主は笑っていてくれるだろう
主が嬉しいで一杯になればいい
楽しいで一杯になればいい
俺は主が好きだ






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