犬と私の一つの約束 7











金吾が裏切った
刑部が死んだ
長曽我部も、真田も、島津も、毛利も、甚大な被害を被った

私は、家康を殺した

戦場のどこかで小太郎を見た

私は、家康の亡骸の前でうずくまっていた
この上ない空虚を味わいながら、
本当の意味で、絶望を知った

静かだった
血の匂いが取れなかった
家康は温かかった
何の音も聞こえなくなった
風が吹いた
家康はどんなに揺すっても目を開くことは無かった

笑った気がする
倒れた家康に何か言った気がする
返事が無かったことだけ、覚えている
笑った
そうだ、私は、家康の死体の横で笑った
それから、涙
そう、涙が溢れた気がする
目が痛かった
赤く眩んだ視界で、横たわった家康を見た
空っぽで、苦しくて、悲しかった
何も言わない家康の横でのた打ち回った
それから、それから、それから…

小太郎が居た
抱きしめられた
温かかった
笑った
小太郎は以前に私に笑っていて欲しいと言っていた
だから笑った
また抱きしめられた
温かくて、心地良くて、瞳を閉じた

小太郎が名前を呼んでくれている気がした






←/6 /8→
←三成部屋
←小太郎部屋
←BL
←ばさら
←めいん
←top