犬と私の一つの約束
6
豊臣秀吉が没した
竹中半兵衛は行方が分からない
あれから、三成様にお会いしていない
今どんな想いで生きているのかと思うと、
今すぐにでも駆け出してしまいたい
お側に行って、抱きしめたい
だがそれは無理な話だ
凶王軍となった豊臣軍は怒涛の勢いで進軍を進めている
東軍についた北条はその情報収集に走り回っている
私事に回す余力など無いに等しい
(…三成様、どうか泣かないで下さい)
どれだけ大切に思っていたか知っている
どれだけ慕っていたか知っている
三成様が泣いているかもしれないと思うと、
心臓がきりきりと絞られるように痛んだ
三成様の為に自分が出来ることなど何も無い
それがどうしようもなく辛いと感じた
自分が石田軍だったならと思った
(……主)
栄光門の上から見える景色はいつもと変わらない
青い空も、賑わう城下も、穏やかなままだ
いつか小田原に来て欲しいと思った
咲き誇る桜を見て欲しい
城下を共に歩いてみたい
自分が好きだと思うこの国を、三成様と共に見て回りたい
「風魔ーっ!」
ぼんやりとした思考は主の呼び声に掻き消された
急ぎ主の下へ馳せ参じれば、
苦い顔をした氏政様が、名のある武将が揃っていた
(…聞きたくない)
西軍の進軍は早い
真田に長曽我部、島津、毛利、小早川
東軍と戦うには十分な戦力が揃っている
「風魔よ、西軍との決戦の日取りが決まった」
(嫌だ、聞きたくない…)
「西軍に打ち勝つぞぃ!」
「「おお!」」
目の前で渇をいれる主にただただ頭を垂れることしか出来なかった
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