犬と私の一つの約束
5
家康が裏切った
目の前に倒れ伏す秀吉様に駆け寄った
小太郎とやっと和解できた
敵同士だとしても、私を許してくれた
嬉しかった
だから、罰が当たったのだと思った
たった一人の主君を裏切った私を、
容赦なく断罪したのだと、そう思った
小太郎は何も悪くない
私の甘さが、弱さが、秀吉様を殺したのだ
刑部に付き添われ城に戻った
何か言葉を掛けられた気がする
だが、雨の冷たさしか覚えていない
家康への怨嗟しか零れてこない
憎いと思った
秀吉様を手に掛けた家康が、
こんな暴挙を許した神が、
守ることの出来なかった自分自身が、
憎くて憎くて堪らなかった
憎しみのまま突き進むことしか出来なかった
誰の命でもなく、自分の感情のままに人を殺した
立ち塞がる者全てを斬り捨てて進んだ
秀吉様が亡くなられたあの日、
そのまま行方知れずになった半兵衛様を思った
私も、あの日斬り捨てられ死んでいればと何度も思った
羨ましいとさえ、思ってしまった
家康のことだけを考えた
意識的にその他を排除した
憎しみに濡れていないと死んでしまいそうだった
一人きりで布団に横たわる度、
小太郎の温かさを思い返しては涙した
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