「やめ…」

やめろ、と言おうとした口は男の口に塞がれた

男の手が着実にジーパンの中に押し入ってくる

手から逃れようとすれば激しく口内を攻め立てられ、
舌から逃れようとすれば脱がせようとする手付きは一層強引になる

「ふッ、ん゛ッ!」

どれだけ暴れようと、何の抵抗にもなっていないことが悔しくてたまらない

「ん゛ん゛ッ!!」

必死の抵抗も空しく、少しずつ晒されていく下半身
下着ごと膝辺りまで脱がされたジーパンが絡み付き、
余計に身動きがとれなくなる

鼻先に感じる男の荒く乱れた呼吸が恐ろしかった

「ッ!?」

男の手がゆっくりと腹から下へさがって行く

陰毛を撫で、腰骨をなぞり、太ももを撫でる
萎えきった私自身には一切触れず、
男の手がなぞった箇所を今度は舌がまさぐってゆく

舌が下半身を攻め立てれば、大きな手は上半身を攻める
気持ち悪さと不快感から生理的な涙が溢れるのを止められなかった

「…ぅーッ、んぅ゛っ!」

逃れたい一身で身をよじるが、
離れることのない舌に、絡み付きうごめく手に、
そんなものは何の意味もないと思い知らされるようだった

絶え間なく動き回る強引な手つき
執拗に乳首をいじられ、舐められ、噛み付かれる

恐怖に怖じ気付く己が、惨めで情けなくてやりきれなかった
今まで知らなかった無力さを、
目の前に晒されるようで悔しさで一杯になった

「…っ、……っ!」

歯を食い縛り嗚咽を堪える
私の反応を楽しむようなこの男を、
これ以上喜ばせるものかと思った

「ひぁッ!?」

生温かく、湿った感触が私自身を包み込む

依然として縛られたままだが、男の手から自由になった腕を降り下ろした

「ゃ、めろッ!やめろッ!!」

パシリと呆気なく掴まれた腕

そのまま、抵抗することも敵わない強い力で押さえ付けられる

「んう゛ッ!」

男の口にくわえられた私自身を、
男の舌が舐め回す感触に思わず声が上がる

初めて味わう未知の感覚

恐怖と怒りしかないというのに、
男の舌に反応してしまう己の体が恨めしかった

浅ましい雄としての反射になけなしの自尊心すらも、
ぐちゃぐちゃに踏みにじられているようだった

「嫌、だっ……」

私の声に、男の動きが止まる

「………もう、やめて、…くださいっ」

震える声で懇願する
このままやめてくれるのかもしれないと、
僅かな期待をしながら必死に声を絞りだした

「…っ、お願い、します
……もう、やめてくださいッ」

こんな男に懇願する己が情けない
惨めさと悔しさでおかしくなりそうだった

「…っ」

男の口が離れ、代わりに手が私自身に触れる
すでに萎えてしまったそれを弄びながら、男が鼻で笑った

「…う゛!」

急に持ち上げられ、折り畳まれた足に息と一緒に声が漏れる
体操座りのような格好にされ、窮屈さに息が荒くなる

今、男の前に無防備に晒されている尻の穴

恐怖と羞恥にじっとりと背に汗が吹き出してくる
逃げ出そうともがく度に、押さえられている足が痛んだ

「ひッ!」

最も恐れていた場所に男の舌が触れる

丹念に舐め回し、中に押し入ろうとする舌

「やっ…、やめろッ!嫌だぁッ!!」

嫌だ、嫌だと狂ったように声を張り上げ、強引に暴れまわる
だというのに、それを押さえ付ける男の手はびくともしない

少しずつ中に入ってくる舌が気持ち悪い
何度も舌を抜き差しされ、穴が押し広げられていくようだ

「嫌だッ!やめろッ!やめろおおぉッ!」

舌が抜かれ、男の指が入ってくる

「ぃ、痛いッ!嫌だぁッ!」

一本、二本と増やされていく指
痛みと異物感に穴がぎゅうぎゅうと締まっている
それをほぐすように指がうごめく
ゆっくりと出し入れされ、中ではバラバラに動かされる

「い、やだっ!嫌だッ!!」

気が遠くなるような時間に感じられた
きっと実際にはさほど長い時間ではないのだろうが、
こんな行為を強いられながらだと、あまりにも長すぎる時間だった

止まらない指の動きに吐き気が込み上げてくる
人としての尊厳すらも失っていくようだった

ようやく指が抜かれ、荒い息を吐き出しながら嫌悪感に苛まれる

ジジ――と、男がファスナーを下ろす音に身をすくめた

一瞬で吹き出した脂汗に不快感が増す
しっかりと押さえ付けられた足は動かすことすら出来ない
あまりの恐怖に声を上げることすらも出来なくなる

目隠しごしに溢れて伝った涙の冷たさに身震いした

熱く、固いものが尻の穴にあてがわれる

「い゛―――ッ!!」

指とは違いすぎる質量に息が詰まった
ぎちぎちと強引に挿入ってくる男自身に更に涙が溢れる

あまりの痛みに裂けているのかと思った

ゆっくりと根元まで挿入れられ、男が息を吐く

慣らしているのか優しさなのか、
そのまま動きを止めた男に頭を撫でられた

痛みと異物感ばかりがぐるぐると頭の中を回っている
耳障りな電子音が、今日が私の誕生日であることを告げている

「ッ!……ぅあッ!」

少しずつ律動を始める男自身が動く度に、痛みから声が上がる

排便感と気持ち悪さが募っていく

「い゛ッ!……ッッ!」

男のはぁはぁと荒くなる息を聞きながら、
もう死んでしまいたいと思った

ぎゅっと目を閉じ、早く終われと思いながら声を押し殺した

次第に速くなっていく律動に、
内臓が突き上げられるような感覚だった

嫌だ、気持ち悪い、死にたい、どうしよう
そんなことばかりが、
とりとめもなく頭に浮かんでは消えていく

散漫な思考では、もうまともなことは考えられなかった

「…ッ!」

固さと大きさを増した男自身に、終わりが近いことを悟る
更に激しくなった男の動きに揺さぶられながら、
ようやく終わるのかとぼんやりと思っていた

「……ッ、―――ッ!」

根元まで挿入れたまま動きを止めた男自身から、
熱い精液が溢れ出るのが分かった

中にビュルビュルと吐き出されるその温かさに、
今までに味わったことのない絶望感を感じていた






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