Happy   Birthday   side/元就











「石田と付き合ったそうだな」

「情報早ぇえな」

「大谷が嘆いておったわ」

「ははっ、目に浮かぶぜ」

驚く者も多少は居たが、長曽我部と石田の関係は、
特に問題もなく周囲に受け入れられていた

「………あれらはどうする?」

「………どうもしねぇさ」

「…われを面倒事に巻き込むなよ」

「おう」

手土産にと渡された大福を飲み下しながら、一瞥する
底冷えするような笑みにそっと目を伏せた

「……いつまでも隠し通せるものでもあるまい」

「隠せるさ
……三成は俺を信用してるからな」

長曽我部の言葉に思わず眉をしかめる

この男はいつからこうだったのかと考えても答えは出ない
昔はもっと、裏表無く笑っていた
頼られる兄貴分を地で行っていた
聡くも馬鹿な男だった
自分が傷付いても他を守る男だった
どこまでも優しい愚か者だった

こんな顔で、笑う男ではなかった

「ま、そのうちトランクルームでも借りっからよ
それまでもうしばらく、置かしてくれや」

頼むぜ、と笑う顔は昔と変わらない無邪気さで、
ギラリと輝く瞳は見知らぬ人のようで、
ふん、と鼻を鳴らすことしか出来なかった

「んじゃ、またな毛利」

「……ああ」

片手を上げて去っていく後ろ姿にため息を吐き出す
そのまま、普段は使うことのない部屋の扉をそっと開いた

所せましと並べられる石田の私物

友人同士でとった写真の他に、
明らかに盗撮と分かる数多の写真

咎めても、諭しても、我の言葉になんの意味もなかった

(いっそ警察に突き出してやった方がよかったのだろうか…?)

「……長曽我部」

初めて出来た友達だった
昔から壁を作ることの多い我に、初めて手を差し出してくれた男だった

こんなこと、口が裂けても言うつもりはないが、
我は長曽我部に憧れていた
長曽我部のようになりたいと、思ったこともあった

人が集まる長曽我部が、
誰にでも優しい長曽我部が、
心のどこかで我の理想だった

だから、初めて言葉を交わした時は、
笑顔で手を引いてくれた時は、とても嬉しかった

友達だろ、と言われた日を未だ鮮明に覚えている

「…………長曽我部」

どうして、と思ったところで答えはない
長曽我部に尋ねたところで答えられるとも思えない

静謐な部屋の中に溢れかえる石田の私物を見つめたまま、
唇を噛みしめることしか出来なかった






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