Happy   Birthday   side/市











「……あ」

「どうした、市」

長政様の手を握り人込みを歩いていると、遠くに知った顔が見えた

穏やかに笑い合う海賊さんと闇色さんが、
なんだかひどく恐ろしく見えて、思わず長政様の手を強く握ってしまった

「あれは、長曽我部と石田か」

「………うん、そうね」

人波に流されるままに歩いていけば、
二人もこちらに気付いたらしく近づいてきた

「久しぶりだな長宗我部、石田」

「…こんにちは」

「ああ、悪ぃな邪魔しちまったかぃ?」

「……久しいな」

海賊さんと言葉を交わす長政様の後ろに隠れ、
闇色さんをうかがえば、優しい顔で笑っていた

(……可哀そうな闇色さん)

「………長政様」

小さな声で名前を呼び、控えめに袖を引けば、
海賊さんが苦笑しながら頭を掻いた

「じゃ、俺らももう行くわ
邪魔しちまって悪かったな」

「ああ、規則を守り正しく行動しろ!」

「……長政様、早く行こう?」

二人の後ろ姿に大声を投げかける長政様の手を引き、人込みに飲まれていく
しっかりと握り返される暖かな手のひらを愛おしく感じた

「……あの人」

「どっちだ、長曽我部か?」

「うん……
………あの人嫌な匂いがしたわ
市とおんなじ、冷たくて真っ暗な匂い」

「市、失礼だろう!」

「……ごめんなさい」

(でも、本当に嫌な匂いがしたの
あれは破滅の匂いだって、市、知ってるもの)

「もう怒っていないから、顔を上げろ!
早くお前の見たいと言っていたものを見に行くぞ!」

「……うん、ありがとう長政様」

嬉しさのままに微笑めば、
長政様は顔を背けてしまうけれど、その耳が赤く染まっていることを知っている

そのことが嬉しくて嬉しくて、
長政様が好きで好きで、大好きだと実感する

(………市も、きっといつか長政様を破滅へと追いやるのね)

繋いだ手を見つめながら、少しだけ泣きたい気分になった






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