Happy   Birthday   side/官兵衛











路上に車を停め、その車内から和やかそうに会話をする刑部と三成を眺める

「小生には土産の一つもないってのによぉ」

紙袋から取り出され、三成へと渡された土産を横目に一人悪態を吐くと、
なんだか自分があんまり哀れな気がしてきたから考えるのを止めた

わざわざここまで送り届けるのに一時間
その上帰りもあるってんだからやってられん

ため息で曇ったガラスが悲壮感を漂わせるようで、眉をしかめてゴシゴシと袖口で拭った

「ん?ありゃあ………」

明るく広い店内で、刑部と三成を見張るように座る西海の鬼を見つけ思わず声を上げた

「三成と一緒に来た……ってわけじゃあなさそうだな」

刑部と三成から見えず、かつ自分からはよく見える場所
そんな所から狩りをする獣のような顔で二人を見詰めている

「…………」

その視線に空恐ろしいものを感じて無意識に手を握り締めた

刑部が何を言っているかは知らんが、三成の顔が強張りそのまま俯いてしまう
その後も刑部が何か言っているようだが、三成は俯いたまま首を横に振るばかりだ

「………ようやく終わったか」

刑部でも聞き出せない秘密とやらは死守されたようだと思いながら、
きっとこの後刑部に八つ当たりされることを思って憂鬱になる

笑って別れた二人はそのまま別々の方向へと歩いて行った

ガチャリとドアを開けて助手席へと乗り込んだ刑部に、
嫌味の一つでも言ってやろうかと顔を向ければ、
苛立った様子はなく、それどころか沈んでいる様子で目を見張った

「おいおい、お前さん、三成に秘密があんのがそんなに嫌なのか?」

「そうではない……」

億劫そうに深いため息を吐いた刑部は、そのまま腕で顔を覆いシートに深く沈みこんだ
その横顔に声をかける事がはばかられ、小生は無言で前を向くしか出来なかった

「……あ」

視線を店へと向ければ、ちょうど西海の鬼が出てくる所だった

しっかりとこちらに向けられた視線
ニヤリと吊り上がった口元
一度ひらりと手を振ると、そのまま三成と同じ方向へと歩き出していった

「……長曽我部め」

地の底から響くような低い声音に驚き振り返れば、
刑部が忌々しいと言わんばかりの顔で西海の鬼が去っていった方を睨み付けていた

「気付いてたのか」

「三成は気付いておらなんだようだがの
われの位置からは、なァ……」

早く出せと言う様に振られた手にサイドブレーキを上げる
そのまま帰路につく道へと車を走らせた

「あのように粘つく視線を送りながら、見事に気配を消しよる」

「お前さんらを嫌ぁな目で見てたしな」

フンと鼻を鳴らし、刑部はまた深いため息を吐き出す
それに同意しながら空いた道を走っていく

「……三成が、アレを大層信頼しておるのよ」

「………ふぅん」

「…………われはちと眠る」

「あーあー、着いたら起こしゃあいいんだろ?」

返事もなく窓の外へと顔を背ける刑部に舌打ちでもしたくなったが、
吐き出される深い深いため息に何も言えなくなった

「…………われはただ、三成が心配なのよ」

「……んなこと、よく知ってるよ」

そのまま黙ってしまった刑部に、何か声をかけようかとも思ったが、
生憎なのかなんなのか、小生にはかけられる言葉などないことに気付いて口をつぐんだ






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