「熱かったら言えよー」
「……ああ」
あの後、呆然とする三成をシャワーへと押し込んだ
三成がシャワーを浴びている間にドアも窓も開け放し換気をした
そしてきっちりと服を着て出てきた三成を床に座らせ、
俺はソファーに座り三成にドライヤーを当てるという今に至る
「どうだー、乾いたかー?」
俺の言葉にコクンと頷き、三成が振り返る
「…………っ」
視線を彷徨わせながらパクパクと口を開閉させ、
結局何を言えばいいのか分からないのかそのまま俯いてしまった
泣き出しそうな顔で唇を噛み締める三成に、
強引に押し倒したのは失敗だったかと頭を掻いた
それでも、これで何か変わればいいと思った
人と触れ合うことは、恐怖だけではなく快楽もあるのだと知って欲しかった
やり方が極端すぎたとは思う
それでも、三成の望む普通に引っ張ってやりたかった気持ちに嘘はない
「なぁ三成、全部俺がやったと思え
あの男のしたことも、全部だ」
そう告げれば、よく分からないのか三成が首を傾げる
手を伸ばせばやはりビクついていたが、
構わずその頭に手を置き、視線を合わせる
「アンタを脅かすものは俺が全部どうにかしてやる
……だからもう、何にも怖がることなんかねぇよ」
真っ直ぐに見詰め返す三成の瞳から涙が零れていくのを黙って眺めた
声も無く泣きじゃくる三成の頭を何度かぽんぽんと撫でてやれば、
ぎゅっとしがみ付かれ、小さな声で謝罪と感謝を口にされた
三成の体に腕を回し、強く抱き締めたまま頭を撫でる
三成の髪から香るシャンプーの匂いに何だか笑ってしまった
「人と触れるのは怖いことばっかりじゃねぇんだ
まぁ、俺のやり方が極端なのは悪かったがよぉ
そのことを、ちゃんと知っといて欲しかったんだ
怖がらせて悪かったな、三成」
微かに首を振り、しがみ付く手が強く握られる
ぎゅうぎゅうと頭を押し付けてくる三成は子供のようで、
その無防備さが、しがみ付く強さが、信頼の証のようで誇らしかった
「家康も真田もアンタのこと心配してたぜ
まだ人が怖ぇなら、俺が隣に居てやる
だから、今度皆で遊びにでも行こうぜ」
小さく、それでも何度も頷く三成の背を叩きながら出来るだけ明るい未来の話をする
馬鹿なことをして、目一杯笑ってはしゃげるような日常の話
泣いていた三成を抱き締めてそんな話をしていれば、
泣き疲れたのかいつの間にか静かな寝息を立てていた
運ぶ途中で起こすのも可哀想だと思いソファーへ引っ張りあげる
三成に自分の部屋から持ってきた毛布をかけてやり、
俺はソファーに背を預けたまま瞳を閉じた
「いい夢見ろよ、三成」
背中に感じる三成の息づかいや体温が、今までになく愛おしかった
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