二人ぼっち 67











最前列に崇源院の方を挟み竹千代と国千代が座っている
多少居心地悪そうに俯く竹千代と、真っ直ぐにこちらを見る国千代
はたから見れば、国千代を将軍に添えたいと思う者の方が多いだろう

だが、真っ直ぐにこちらを見つめる国千代の瞳には浅ましく天秤が透けて見える

どうすれば気に入られるか
どうすれば上手くやれるか

そうやって保身に走る者達と同じ色が浮かんでいるのだ

「竹千代、こちらへ来なさい」

「は、はいっ!」

手招きをしながら竹千代を呼べば緊張した面持ちで立ち上がる
一度だけ国千代に視線を向け、それでも迷い無い足取りで近付いてくる

「お久しぶりです、お爺様」

「そう緊張するな、ワシはお前の爺だぞ?」

ワシの言葉に可笑しそうに笑う竹千代を膝に乗せ、大広間全体を眺める
竹千代の笑顔に目元を弛ませる崇源院に好感を覚えた

「お、少し重くなったか?」

「そうですか?」

竹千代と言葉を交わしながら国千代に視線を向ければ、
そわそわと辺りを窺い、目配せをする家臣を気にしていた

「お爺様、私も…」

「ならん」

こちらに来ようと立ち上がりかけた国千代に、厳しい声音でそれを制した

「ここに座ることが許されるのは将軍になる者のみだ!」

肩を震わせたまま立ち尽くす国千代を見据え、
苦々しい顔をする家臣を牽制するように語気を強める

「お前は確かにワシの孫だが、お前は将軍の家臣である
生涯ここに上がることは許されぬ身だと、しかと心せよ!」

「………っ、はい」

ワシの気迫にあてられたのか、真っ青な顔で返事をする国千代に頷いてやる
幼子相手に厳しいことを言ったとは思うが、
この言葉は国千代よりも、国千代を利用しようとする家臣達へ向けたものだ
これ以上孫達を利用させない為にわざわざ辛い言い方をした

「…お爺様」

膝に座る竹千代に袖を引かれそちらへ顔を向ける
困ったように眉をよせ、内緒話でもするように顔を近づけてくる

「国千代を守ってくれてありがとう」

それだけ言うとはにかんだ笑みを浮かべながら顔を離した
そのままワシの肩越しに三成を見詰めたかと思えば、後ろで三成が笑う気配がした

竹千代の頭を撫でながら、大広間を見渡す
泣き出しそうな顔の国千代
満足そうに頷いたり、歯噛みをしたりする家臣
ホッとしたような顔をする秀忠と崇源院

かすかにため息を吐き、そっと目を閉じ三成の気配だけに気を配った






←/66 /68→
←三成部屋
←BL
←ばさら
←めいん
←top