二人ぼっち 57











襖を開けた瞬間天地が返った
何がおきたのか分かったのは殴られたであろう頬の痛みと、
したたかに打ち付けた背中の痛みがじんじんと熱を持ち始めた頃だった

「…えーと、三成?」

「………お愛が死んで幾日たった?」

「…十六日」

「いつになったら長丸と話をする気だ?」

怒りに歪んだ目元が厳しくワシを見据えている
ああ、三成がこんなに怒るのは関ヶ原の時以来だな、などと頭の隅で思っていた

「…貴様に厭われていると長丸が泣いた」

「っ!ワシは、長丸を愛している」

「………なら自分で言ってやれ!」

声を荒げ、厳しく怒鳴りつけたまま三成はワシを外へと締め出した
大奥中に響き渡ったのではないかと思う程の大声だった

この怒りは長丸を愛するがゆえなのだと思うとひりひりと胸が痛んだ

きっと大姥局を呼んだことや、長丸との時間をとろうとしないこと、
それらが積もりに積もった末の怒りなのだと思い知らされる拳の強さだった

ワシが長丸を見詰める目に嫉妬が渦巻くのを二人とも感じていたのだろう
抑えようとしても漏れ出すそれを、ワシ自身も持て余していた
そんなままで長丸になんと声をかければいいか分からなかった

そうやって先延ばしにした結果がこれかと思うと、
自業自得、という言葉が痛いほどに胸に刺さった






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