二人ぼっち
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膝に乗った家康の頭を撫でる
所々に白髪の混じった髪
「長丸はずいぶん大きくなっただろう」
「ああ、子供の成長とは早いものだな
ついこの間まで泣いてばかりの赤子だったというのに」
感慨深そうに微笑む家康に髪を触られる
伸ばす一方の髪はもうずいぶんと長くなった
「…嬉しいか?」
「嬉しいさ」
柔らかな空気を纏い、家康が穏やかに笑う
「三成も嬉しそうだ」
「…ああ、嬉しい」
ゆっくりと目を閉じ、家康の手の感触だけを感じる
ひどく満ち足りた時間だと思った
「……大切にしてやれ」
「…ああ」
家康も、お愛の体調が芳しくないことは分かっているだろう
元よりあまり良くなかった目はもうほとんど役割を果たしていない
年中風邪のような症状が続いている
「ワシは、お愛も長丸も好きだ」
「知っている」
「…それでも、一番はいつだって三成だけだ」
「……知っている」
家康は本当にひどい奴だ
そんな家康の言葉を嬉しく思う私も、同じようにひどい奴なのだろう
「来年、春になったら花見でもしよう」
「…何度聞いたことか」
「う、そう言わないでくれよ」
「だが、いいだろう
二人も一緒に行くのだろう?」
「ああ、そのつもりだ」
残酷で、浅慮だと思う
私も、家康も、本当にひどい
「……ささやか過ぎる思い出作りだな」
「……そうだな」
口にする価値も無い罪悪感が胸を占める
きっと家康もそうだろう
私抜きで、親子三人で花見をしろと言えない自分が少しだけ嫌になった
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