二人ぼっち
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三成の膝に頭を乗せ、髪を撫でられる感触に目を閉じる
冷たい手が頭を撫でるのを心地良く思った
「これで何人目だ?」
「えぇと……五人目、か
男児だけなら三人目だな」
「お愛は?」
「大丈夫だ、問題無い」
「……気を付けろ
ここの女たちは皆したたかだ」
「…毒でも盛られると?」
「生んだのが男児なら、尚更な」
「侍女たちには気を付けるよう言ってあるさ」
「…貴様はお愛をことさらに庇うな」
「…お前が気に入っているからさ」
しばし視線が絡み合い、三成からふっと逸らされる
不満げに歪んだ口元を愛しく思った
「………あれが大切なら、側に居てやればいい」
「思ってもいないことを…
ふふ、三成は嘘吐きになったな」
「…………ふん」
笑いながら三成の髪に手を伸ばせば、サラリとした毛先に触れる
日の光を返し、銀髪が輝くのを美しいと見詰めた
「…跡継ぎか
なあ、三成は誰が良いと思う?」
「……育つまで分からん
が、今の世ならば凡庸でもいいのではないか?」
「平和な世、か」
「一人が力を持たずとも、周りがそれを補えば良い」
「…そうだな」
お愛が子を産んだ
元気の良い男児だ
母子共に産後は良好だ
「…今更だが、家康は父になったのだな」
「………子が欲しいか?」
「はっ!甘えてくるのは貴様だけで充分だ」
「手厳しいな」
「…私は貴様で手一杯というだけだ」
「はははっ!」
微かに頬を赤く染め、明後日の方向を見ながら三成が言う
全てが愛らしく、愛おしく、手放せない
三成の全てを愛していると思う
「……三成」
「なんだ?」
「何人子が出来ようが、やはりワシが心から愛せるのはお前だけだ」
「………っ!」
ワシの言葉に恥ずかしがり唇を噛み締める
先程の比ではなく、耳まで赤く染め上げる
そんなところを愛して止まないのだと、知らないんだろう
「愛している、三成」
笑いながら頬に手を添えれば銀の睫毛が瞬き、
白い肌が、閉じた瞼が、鼻先が近付き、
どこまでも優しく、甘く、口付けられる
「…私も、愛している」
不貞腐れたように唇を尖らせ、
それでも愛の言葉を吐く三成に笑ってしまう
そうしてまた自分がどれ程三成に甘え、心底溺れているのかを自覚するのだ
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