二人ぼっち
38
ギラギラと男臭い欲の色
獰猛な獣のようなその瞳
何の遠慮もない手つき
「……ぅあっ!」
それだけで、この身はこんなにも滾る
熱く熱く燃え滾り、家康を求める
「……お愛が好きか?」
そう訊ねる顔が嫉妬にまみれていた
嫉妬した人の顔はこんな風に歪むものかとぼんやりと考えていた
「…気に入っては、いる」
私の言葉に顔を歪め、嫉妬の色はより一層深くなる
「………ここの女は嫌いだと、言っていたじゃないか」
「今でも好かん」
「…………お愛は特別だと?」
「…あれは、家康を大切にするからな」
「………………」
悲しみ、寂しさ、憎しみ
嫉妬、怒り、虚しさ
全てが詰め込まれた表情
よくもまぁ、器用な顔が作れるものだと思った
「………三成、ワシが好きか?」
「っ!んっ!」
訊ねておきながら、答えを聞くことを怖がるように、
声を発することを許されないような口付け
口内を蹂躙する舌に、自らの舌を絡ませる
こんなことでいいのならいくらでもする
それで家康の不安が、恐怖が薄れるのならば、
私は畜生に成り下がり、家康の下僕となろう
その激情が私へと向けられる限り、逃げられはしないのだ
「ぃえやすっ、好きだ…」
「………三成」
「疑うな
この身は、心は、私は、貴様だけのものだ」
頬を撫で、口付けを落としてやれば泣き出しそうな顔をする
この男のどこが器が大きいというのだろう
一体どこが温和で朗らかだというのだろう
家康は私を愛していただけだ
いかなる時も、それ以外に大きな関心がなかっただけだ
太平のこの世で、家康はもう天下を手放すことを望んでいるではないか
「…幾度生まれ変わろうと、私は貴様だけを愛し続ける」
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