二人ぼっち
37
組み敷いた三成は昔とまるで変わらない
伸びた銀の髪
生地から選んだ着物
幾重にも刺されたかんざし
そんなものは、三成を縛り付けるだけにすぎないと分かっていた
そんなものでは、繋ぎとめられることがないと分かっていた
それでもささやかに自由を奪い
大奥の取り締まりという地位に押し込め
三成をここに閉じ込めようとした
全てはワシの我がままだ
こんなことで三成を閉じ込めておけるわけもないと分かっているのに
「…家康」
畳の上に散らばった髪のなんと美しいことか
絹糸などより、ずっとずっと輝いている
ワシを射抜く瞳のなんと鮮やかなことか
宝石や水晶などよりも、ずっとずっと多彩に色付いている
さらけ出された肌のなんと真白きことか
雪よりも花よりも、ずっとずっと無垢な色だ
「………家康」
背に回された手の冷たさ
見詰めてくる瞳の柔らかさ
許される温かさ
全てが、ワシを愛していると分かる
分かるのに、この心が収まらない
「…っ!」
舐め上げる肌の肌理細やかさ
甘く清潔な、髪の、肌の、三成の匂い
薄っすらと赤く色付く愛らしさ
「ぁ……んっ!」
いつまでたっても慣れない初々しさ
「………んんっ!」
目元が赤く色付くことで、
これだけ興奮する女など居ない
三成だけだ
三成だけをこの心は、この体は、貪欲に求めるのだ
「…ぁ、………家康っ!」
伸ばされる手も、
色付く肌も、
全て全て、ワシだけのものだ
誰にも触れられたくない
誰にも触れて欲しくない
これは、ワシの、ワシだけのものなんだ
「………っ、いえ、やすっ!」
ワシに残されたものは三成だけなんだ
だから、だから、誰も、
誰もワシから三成を奪わないでくれよ
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