二人ぼっち 33











「……はぁ」

書類からは目を離さぬまま深いため息を吐く

三成とお愛が仲が良いなんて知らなかった
大奥を取り締まる者と大奥の姫だ
話す機会くらいいくらでもあるだろう
それでも、今まで三成から女たちの話を聞くことは無かった
ただ、次はあいつを抱いてみろと言われるくらいだった
抱いた後にその女の名を出しても、誰だ?と言うような有様だった

だから、三成が誰かと仲良くなるなんて、考えもしなかったのだ

「家康様、如何なさいました?」

「ぅわっ!
………ああ、小夜か」

「ええ、小夜でございます
そんなため息など吐かれまして、
お方様と喧嘩でもなさいましたか?」

不思議そうな顔をして、茶を取り替える小夜に苦笑する

もう誰も、三成を三成とは呼ばない
お方様、と呼ぶばかりだ
名で呼ぶのはもうワシくらいのものだろう

「いや、そういうわけではないのだが……
なあ、小夜は三成とお愛が仲が良いのを知っているか?」

「……もしかして、それで妬いてらっしゃるので?」

「…………まぁ、な」

「…あ、ははははっ!
ご冗談も大概になさいませ!
あのお二人がどれだけ家康様を想ってらっしゃるか、
家康様が一番ご理解なさっているかと思いましたのに!」

目尻に涙を浮かばせるほどに笑う小夜に、
気恥ずかしさから目を逸らす

「確かにお二人は仲がよろしゅうございますよ
今日もご一緒にお茶を飲まれるかと…、ふふふっ」

笑いが収まらないまま小夜が可笑しげにそう告げる

一緒に茶を飲むほど仲が良いなんて初耳だ
せいぜいお愛が三成を慕い、
三成も邪険には扱わないくらいかと思っていたのに

「…な、なぁ小夜、その、二人はいつもどんな話をするんだ?」

「まあ家康様!
野暮な男は嫌われますわよ?」

茶化すように言葉を返してくる小夜に、
確かに嫌な男の最たるものだと納得する

「…うぅん
それでも、三成が気に入った相手なら、気になるんだからしょうがないじゃないか…」

「あら、お可哀相なお愛様
そんなことをご本人たちには言ってはなりませんよ?」

「それくらい、分かっているさ」

「ならよろしいですけれど…
それでは失礼いたしますね」

何の解決も、答えもくれないままに去って行く小夜にため息を吐く

ワシよりも世界の狭い三成
誰よりも美しく、気高く、清廉な三成

大奥で一番人に気を使い、優しさを持って接するお愛

三成がお愛を気にかけるのはきっとワシの為だ
お愛以上にワシの想いを汲んでくれる者は居ない

居るとするならばそれは三成くらいのものだ

色事が終わった後でさえ、ワシに気を使い、
早く三成の元へいっていいのだと笑う

その優しさが、三成に向けられたとしたら?

三成が、その優しさを受け取ったとしたら?

無様に膨れ上がる嫉妬心を抱えたまま、
青い青い空を憂鬱に見上げた






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