二人ぼっち
28
家康が笑う
目覚めたばかりの頃のような、苦しい笑顔ではない
心から嬉しそうに、楽しそうに、
関ヶ原での戦の前の頃のように、晴れやかに笑うようになった
それを、心から良かったと思える
それが、喜ばしい
微塵の憂いも無くその笑顔を喜べることが、嬉しい
きっと家康なら、これから家臣達とも分かり合える
きっときっと、あの頃のように絆を紡いでゆける
これからの家康はどう生きるのだろう
室を取り、子を生し、国を纏め、老いて死ぬ
私は家康の隣に居てもいいのだろうか?
いつまで家康に望んでもらえるだろうか?
きっとこんな不安は瑣末なものだ
家康が私を望む限り、私は家康の側に居続けるまでだ
他の者など知ったことかと思う
家康が私を生かしたのだ
ならば、家康が死ぬまで側に居続けてやる
望まれなくなるその日まで、家康を幸せにすると決めたのだ
あの日、家康の手によって途切れた糸はまた繋がれたのだ
ならばもう、私はこの絆を解かない
私からこの手を離すことはしない
「…笑っていろ、家康」
貴様が笑えば、それだけでいいのだ
闇が晴れ、光が差すのだ
その力を信じればいい
その力でこの国を纏め上げたのだ
その笑顔で皆を健やかにしたのだ
その笑顔が陰るのならば、私がきっとその闇を払ってやる
だから、貴様は阿呆のように笑っていればいいんだ
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