二人ぼっち
27
幼い三成と野原を駆け回っていた
三成に伸ばした自分の手も幼い頃のまま、
傷の一つも無く、小さなものだった
”竹千代!”
”っ、佐吉は、早いなぁ!”
”竹千代が遅いだけだ!”
”はは、そうかもな”
野原に寝転び見上げた空は青く澄みきっていた
”次は負けないからな!”
”ふん、次も私の勝ちだ!”
大きな口を開けて笑い合い、手を繋いだ
また目を合わせて笑った
「…ぅ」
「起きたか?」
「三成…?」
「どうした?」
「………いや、何でもない」
腕の中の三成を抱き締めて息を吐く
何か言葉にすれば、
夢の中で感じたことが消えてしまう気がして恐ろしかった
「…大丈夫か?」
「大丈夫、何でもないさ」
「それならば、泣くな」
そっと頬を撫でられ、自分が泣いていたことが分かった
泣くようなことなんて一つも無い夢だったのに
あんなにも幸せな夢だったのに
「…泣くな、家康」
「…三成………三成っ……」
抱き締めてくれる三成が、堪らなく愛おしかった
声も上げられずに、涙を零した
「…すまん」
「謝るな」
「……っ、すまないっ…」
「…謝るな」
あの空があんまり青かったからだ
三成があんなに楽しそうに笑うからだ
ああ、今日がまた始まっていく
「…とても、幸せな夢を見たんだ」
「幸せなのに泣くのか?」
「幸せすぎて、な…」
「…ふぅん」
今日も笑っていられるだろうか?
間違いを犯しはしないだろうか?
嘲られることは?
蔑まれることは?
「…貴様は、これからもっと幸せになる
夢くらいでもう泣くな」
「……幸せに?」
「……私がっ、貴様を幸せにしてやるっ!」
「…………」
顔を真っ赤にして真っ直ぐな瞳で見つめる三成に言葉が出ない
誰が、誰を、幸せにする?
三成が、ワシを?
「は、はははっ、あは、あははははっ!」
「なっ、貴様っ!笑うなっ!」
「ははっ、いや、フフフッ、ありがとう三成!」
「〜〜〜っ、さっさと行け!遅刻だっ!」
「ああ、うん
愛している、三成」
「〜〜〜〜!」
赤みの引かない顔で怒鳴る三成に口付けを落とし、勢いよく布団から跳ね起きる
「行って来る!
朝餉はちゃんと食べるんだぞ!」
「…い、家康ぅうううううっ!」
「はははっ、それじゃあな!」
後ろから聞こえる”残滅するぞ!”の声に、
懐かしさからまた笑いが込み上げてくる
きっと、ワシはもう大丈夫だ
これから先何があっても、きっと大丈夫
三成がワシを待っていてくれるなら、何だって大丈夫だ
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