二人ぼっち 25











「なあ、今度一緒に出かけようか」

「私が外に出てもいいのか?」

「いいさ、ワシも一緒だ」

「家康はどこへ行きたい?」

「そうだなぁ、これから暑くなるだろうし海か?
三成はどこへ行きたいんだ?」

「…家康と一緒ならどこでもいい」

「…ワシだってそうさ」

隣同士に並べた布団にもぐり込み、向かい合って他愛の無い話をする
額がくっつきそうなほど近付いて、未来の話をする

十年以上前にはいつもあった風景
十年前からはありえなかった風景

「…雨だ」

「ああもう梅雨の時期か」

「強いな」

三成がむくりと起き上がり、庭に面する襖と雨戸を開く
生暖かい空気と雨の匂いが部屋に入り込む
縁側に立ち尽くす三成を後ろから抱きしめてやれば、
ため息を吐きワシに体重を預けてくる

「どうしたんだ?」

「…この花は散るのか?」

「長雨になったら散ってしまうだろうな」

「…そうか」

「気に入っていたか?」

「…少しな」

「大丈夫、来年また咲くさ」

「…詳しいな」

「ははは、まあいいじゃないか
そろそろ寝ないか?」

「ああ」

またごろりと布団に横たわり、薄暗い天井を見上げる
隣に寝転ぶ三成はどこか寂しそうな顔をしているように見えた

「三成、抱き締めてもいいか?」

「…勝手にしろ」

三成は何か言いたげに口を開いたが、
口をへの字に曲げ頬を赤く染め反対側に寝転んでしまった
その細い体を後ろからぎゅっと抱き締める

「明かりを消さないのか?」

「たまにはいいんじゃないか?」

「…消してくる」

呆れたように立ち上がった三成の姿を目で追った

息を吹きかける音と真っ暗闇
微かな衣擦れの音と静かな足音

「三成、踏まないでくれよ?」

「そんなへまなどしない」

「ははっ」

腕の中に戻ってきた三成を抱え直し、サラサラの髪に顔を埋めた

「おやすみ、三成」

「ああ、おやすみ」

そっと握られた手を握り返し瞳を閉じた

明日には雨が上がればいい
まだあの花が散らなければいい
そう思いながら意識はまどろみにのまれた






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