二人ぼっち 23











怒り、憤り、蔑み、不満
その瞳に映る全ての感情を受け止める

恐怖で背に汗をかいている
声は今にも震えてしまいそうだ

「これだけは譲ることは出来ない
何と言われようとワシは、三成と共に生きる」

「殿!お考え直しを!」

「そもそも敵大将を今まで生かしておいたことが問題なのです!」

「血迷いなされたか!」

「そんなことが許されるとお思いか!」

口々に吐き出される言葉に眼を瞑る
言葉はただの騒音に変わり、家臣はただの敵に変わった

「…室は取る
きちんと子もなす
これ以上言葉を連ねるのなら、ワシは三成と共に城を去る」

「殿…」

「そんな…」

「今のワシは確かにお前たちの傀儡かもしれん
だがな、それでもワシも人として生きているんだ
この天下を平定したのはワシだ!
異論は認めない!」

しっかりと眼を開き、並ぶ家臣達の顔を睨みつける
息を飲み、恐れと怯えを瞳に浮かべる
苦渋に満ちた顔、怒りに赤らんだ顔
それでも、それ以上の言葉を紡ぐ者は居なかった

「話は以上だ!
皆仕事に戻ってくれ!」

ああ、これからまた陰口を叩かれるのだろう
衆道にして色狂い、なんて言われそうだ

それでも、今までに無く心はやけに晴れ晴れとしていた

言いたいことを言えたのはどれくらい振りだろう?
あのワシの気迫に怯えた顔
これしきのことで、あんな顔をする者たちを恐れていたのかと思うと、
虚しさや遣る瀬無さよりも先に、大笑いしたくなった

大したことないじゃないか、と大声で笑いたくなった

家臣達の去った大広間は嫌に静かだ

ああ、早く三成に会いたい
もう三日も会っていない
話したいことがたくさんある
抱き締めたい
抱き締めて欲しい

このことを話せば三成は笑ってくれるだろうか?

二人で、今までは何だったんだと笑い転げてしまいたい

「…ああ、こんな清々しい気分は本当に久しぶりだ」

言いたいことが言えた
真っ直ぐに顔を見て、話すことが出来た

三成のおかげだと言えばどんな顔をするんだろうか






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