二人ぼっち
22
昨日は家康が来なかった
何かあったのだろうかと思っていれば、小夜とかいう女中が来た
『家康様はしばらくこちらにはおいでにならないそうです』
思い切り殴られたような衝撃と、動揺
深い悲しみと、恐れと不安
『…勘違いなさらないで下さいませ
家康様は、貴方を守る為にここには来ないのです』
内面が顔に出ていたのか、厳しい顔で女にそう言われた
『……私は、目覚めないほうが良かったのか?』
家康は日の本の主だ
家臣と不仲ではあるが、頂点に君臨する権現だ
ならば、私を守るというのは家臣と対立するということだろう?
怖いと泣いていた
信じたいのに信じられないと唇を噛み締めていた
そうやって自分を押し込めてまで、今までずっと笑ってきたというのに、
私の為にと、一人きりで戦おうというのか?
『っ、そんなことを言わないで下さいませっ!』
瞳に大粒の涙を堪え、拳を握り締めて、女が叫ぶ
『貴方が目覚めてから、家康様は笑えるようになりましたっ
…貴方が居たから、家康様はここまで生きてこれたのですっ!』
ところどころ裏返る声で、女が必死に叫ぶ
溢れた涙が頬を伝っていくのを何も出来ずに眺めていた
『…家康様は三成様がお目覚めになるのを、ずっとずっと待ってらっしゃったんです』
『…………ああ』
『声を、荒げてしまって申し訳ございません…
私はこれで失礼させていただきます』
『おい
……家康を、頼む』
『…もちろんです
お休みなさいませ、三成様』
出て行く女の後姿を見送った
自由に出歩くことも許さない身をもどかしく思う
一人きりで抱え込むなと、私を頼れと、怒鳴ってやりたい
だが家康がここに来なければ、それすらも言うことが出来ない
自分の無力さに俯いた
「…家康、私はお前の側に居たい」
今日も家康はこの部屋には来ない
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