二人ぼっち 21











三成が目覚めたことにまだ誰も気付いてはいない
いつまで隠し通せるかは分からない
早々に対処しなければならない問題だと分かってはいる

だが、家臣にワシの言葉が届くのかと聞かれれば首を横に振るしかない
ワシはただの操り人形と同じなのだと、自分自身がそう思ってしまっている

三成に負担を掛けたくない
ただでさえ目覚めたばかりで大変だろうに、
こんな不甲斐無いワシではきちんと守ってやれるか不安になる

守りたいと思う気持ちはこんなにも強いのに、
守る為に敵対するのは家臣だなんて、あんまりじゃないか

「ワシは、三成に側にいて欲しい…」

もう全部を投げ出して逃げてしまいたい
三成と二人で、遠くまで駆けて行ってしまいたい

だが、それではいけない

ワシはここで、日の本を治めるのだと、そう決めたのだ

だからこそ、どう戦うか
どうやって、三成を認めさせるかが重要なんだ

頭であれこれと考えてはみるけれど、良い案は中々思いつかない

ため息を吐きながら凝った肩を回した

「殿、入ってもよろしいですかな?」

「ああ、大丈夫だ」

掛けられた低い声に答えれば静かに開かれた襖

「…最近、何か良い事でもございましたか?」

「…いや、特に変わりはないぞ?」

猜疑心だらけの瞳に見詰められ、上手く息が出来なくなる
ワシはきちんと嘘が吐けているんだろうか?

「さようで……
そういえば、昨夜あの方の部屋に膳が運ばれた、と耳に挟んだのですが殿は何かご存知ですかな?」

「…ああ、それはワシの分だ」

「……一人、あの方の側でお召し上がりになったと?」

「そうだ」

「………さようですか
それでは、失礼致しました
某は政務に戻らせて頂くとしましょう」

「…ああ、頼んだ」

閉まる襖を見詰め、ゆっくりと眼を閉じた
思ったよりも早く気付かれそうだと長い息を吐く

「………三成」

今すぐお前を抱きしめたいよ、と心の中で呟く

三成と共に居られるこの幸せすらも許されないのなら、
いっそ世界など滅んでしまえと思ってしまう

そんなことを考える自分の情けなさに涙が出そうだった






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