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紋章のデザインに関するFAQ by Blau-PRINCE
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[更新履歴]
ver.0.11[2011/11/18]ベータ版第11版  5章「リソースについて」のリンク集を最新化
ver.0.10[2011/10/01]ベータ版第10版  5章「リソースについて」にデジタル書籍へのリンクを追加
ver.0.09[2001/12/14]ベータ版第9版  用語の日本語訳を森護先生の著書に合わせました
ver.0.08[2001/09/15]ベータ版第8版  紋章の構成の解説を追加
ver.0.07[2001/02/01]ベータ版第7版  紋章の構成の追加
ver.0.06[2000/11/18]ベータ版第6版  分割図形等、残った解説の追加
ver.0.05[2000/09/01]ベータ版第5版  サブ・オーディナリの解説の追加
ver.0.04[2000/07/23]ベータ版第4版  色のルールとオーディナリの解説の追加
ver.0.03[2000/06/11]ベータ版第3版  サブ・オーディナリの図形を若干と繰り返し図形の新規追加等
ver.0.02[2000/05/12]ベータ版第2版  基本的な構成は?不足項目の追加など
ver.0.01[2000/04/15]ベータ版一般公開

※英国の紋章を基準に記述してあります。
※これを書いている本人はデザイン関連の実務経験がないのでこのページの内容はあくまでもヒントのレベルとお考え下さい。
※内容についての保証はまったくありません。このページの情報を利用したことにより被った被害、損害についての責任は全て放棄します。
※このドキュメントに貢献したい人は連絡ください。ただし建設的かつ具体的な意見、批判が出来る方に限る 。

1.はじめに

1.1 紋章ってなに?

・紋章の発生は11世紀ごろのドイツとされ、一般的には戦場での個人識別のために考え出されたといわれている。
・その後、ヨーロッパを中心とするキリスト教圏内(宗派を問わず)に拡散、発展し、貴族の家督継承と個人をあらわす記号として定着した。
・国王のもとで紋章制度が統括されているため、その国毎に特色があったりする(もちろん「国」というのは当時の「国」の単位である)。
・紋章は紋章表現文(blazon)と呼ばれる紋章の色・図形・姿を記述した特殊な文章を基に描きおろされる。よって、ライオンなどでの基本的なポーズや色以外の部分の描き方(例えば線や腕の太さなど)はデザイナーに委ねられる。
・初期の紋章は単に個人を識別するための記号であったが、のちに芸術的なものとしても扱われるようになった。芸術としての新境地をきり開いたのはオーストリアの芸術家アルブレヒト・デューラーであった。
・日本の紋章制度が家単位(異なる系譜であっても同じデザインの使用が許される。もちろん例外もあるけど)なのに対し、西洋の紋章は個人単位。1つの国に同じ紋章は2つとない。
・同じ紋章の使用が許されるのは父親の死によって家督が紋章とともに嫡子に引き継がれる場合などに限られる。
・父親が存命のうちは、嫡子であっても僅かに違う記号(英国では一般的にはレイブル)などを付け加える。
・クレストやサポータなどは同族であれば同じデザインの使用が許される。
・世界大戦以前のヨーロッパの多くの国々にはそれぞれ紋章を統括する組織が存在していて、紋章の使用に対しては特別な許可が必要であった。
・紋章の統括組織は今でもいくつかの国で存在していますが、古くからの紋章制度を今に残しているのは英国のみ(王位がイングランドとスコットランドに別れるため制度としては2つ)です。
・近世以降は都市・団体・法人などにも紋章の使用が許可されている。
・現在は紋章制度に基づく認可を受けた紋章を「coat of arms」と呼び、それ以外のものは単なる「emblem」と呼んで区別している。

1.2 基本的な構成は?

大紋章(Achievement, Great arms)、中紋章、小紋章(Small arms):紋章は使用される用途に応じてデザインの規模を変えることがある。もちろん紋章自体のデザインは同じだが、小紋章は紋章のみで、中紋章はヘルメットとクレストと紋章などのこじんまりした構成。大紋章は下のほとんどを含める大規模な紋章である。
楯(Shield):これに紋章が描かれる。もちろん、これが単体で描かれる場合が多い。紋章を描くフィールドとして表現する場合はエスカッション(escutcheon)と呼ぶ。楯型の外枠は国や時代ごとに微妙に変化するが、ヒート・アイロン型が全ての時代、地域で一般的。
※楯型というのは楕円や三角形など、他の形で描くよりも人目につ きやすい図形なんだそうだ。人目につきやすいというのは僕は2つの理由があると思う。1つは人間の顔の形に近い(人間の脳には顔の形を認識するためだけに 専用の脳シナプスが存在しているらしい)ということ。そしてもう1つは、そのままだと倒れそうな不安定な形である(=危険である。人間は無意識に危険を察 知する能力があるんだと思う。もしそれが、絵の中の図形であったとしても)ということだと考えるけど、どうだろうか。
クレスト(Crest):冠飾り。日本の兜に付いてる「角」みたいな役割。一般的には冠類の上に描かれる。使用は戦場に赴く男性のみに限られ、領土を持たない女性や聖職者などには加えられない。
冠類:冠類は主にクレストを安定させる目的して使用される。冠、リース、帽子のうちいずれかを階級などに応じて使用する。他にも社会的、宗教的な地位に直接紐付く被り物も使用される。法皇の三層宝冠(tiara)や枢機卿帽(cardinal hat)など。
冠(Crown or Coronet):王冠や、貴族階級に応じた冠を使用する。都市の大紋章では貴族階級の冠を、都市の規模を貴族の階級にあしらって使用したり、城壁をかたどった冠を使用することや、貿易港を擁する都市では帆船を型どった冠を使用することもある。
リース(Wreath):花冠。布をねじあわせた図形。色は属色と原色の2色の組み合わせ。一族ごとに色の配色が決まっている場合が多い。階級には関係なく使用される。
帽子(Chapeau):赤い帽子に、アーミン模様のつばが描かれる。かつては公爵のみに使用されていたが、現在ではリースの代わりに使用される場合がある。
ヘルメット(Helmet):ヘルメット。使用は貴族階級以上に限られる。階級によって描かれ方が変化する。王族なら正面向きで金色。貴族なら横向きで銀色で格子だけが金色。ナイト階級は正面向きでバイザーの開いた状態で描かれる。
マント(Mantling):マント。普通は金属色と原色の裏表で、戦いによってぼろぼろになった様子で描かれる。王族なら外側に赤と内側にアーミン。貴族は外側に原色と内側にアーミン。その他の階級は外側に原色と内側に金属色で彩色される。
サポータ(Supporter): 楯型を支える動物や怪物や人間や物体。物理的に支えていなくてもサポータと呼ぶ。通常は楯の左右に1体ずつサポータを配置するが、まれに片側に1体のみ配 置する場合もある。この場合楯型を斜めに持つ姿勢であることが多い。ドイツ皇帝のように双頭の鷲を楯の背後にあしらう例もある。
コンパートメント(Compartment):台座。紋章やサポータ全体を下から支える。
スクロールとモットー(Scroll, Motto):巻き物。これに家訓(motto)を書き込む。古くはラテン語、ギリシャ語だが近世以降は英語が一般的。
勲章(Order):ガーター勲章(Garter)はガーター騎士団員のみに使用が許される。この他にも騎士団ごとの勲章があり団員はそれらを加えることもある。ヨーロッパ大陸の金羊裘騎士団(goldenfleece)など。
バッジ(Badge): 紋章が家単位(分家でも、ある程度本家に似せた紋章を使用する)なのに対し、バッジは個人を識別する目的で使用されることが多い(もちろん家単位のバッジ も存在する)。1人で数個のバッジを使用する場合もある。描き方としては、大紋章を数個のバッジで取り囲む様に描かれる場合と、バッジを大紋章の下側に並 べて描く場合がある。
旗標類(Flag):バナー旗(banner)、ストリーム旗(stream)、ゴンファノン旗(gonfanon)などのいくつかの特徴をもつ旗標がある。旗は、紋章やバッジに準ずるデザイン。でもどちらかというとデザイン的にはバッジの方が主導的である場合が多いと思う。
その他(パヴィリオン等):天幕(国王以外にはあまり使用されない)等。
 
紋章の構成
クレスト
首に青の鎖を巻いた赤の鹿の頭
金の半月の上に星(3対)
銀と青の花冠
マント
表地が青、裏地が銀のずたずたのマント
ヘルメット
(楯の後ろから見て)右向きのヘルメット
銀と青のチェック模様の地に、青の山形帯、 その上に3頭の歩く金の鹿
スクロール
モットーは”Fais que dois”
紋章の構成

2.紋章学の基礎

2.1 色(tincture)のルールについて。

・紋章で使用する色を総称して「Tincture」という。
・紋章ではどんな色を使用してもいいというわけではなく、大きく「金属色」、「原色」、「毛皮模様」の3つに分類された色を使用する。
・金属色(metals):金(or)と銀(argent)がある。たびたび黄色や白色で代用されるが、文脈的には必ず金・銀として扱う。
・原色(colours):赤色(gules)、青色(azure)、黒色(sable)、緑色(vert)。また、まれに紫色(purpure)も使用される。
※紫色は高貴な色だ。紫色という色作りは非常に難しいらしく、どの地域、どの時代でも紫色を作るのに非常に苦労していたらしい。顔料などの「色作り」の技法について、時代ごとに調べてみるというのも面白いのではないかと思う。
※このほかに橙色(tenny)、深紅色(sanguine)もあるが一般的ではない。新たに紋章を起案する場合は避けた方がいいだろう。
・毛皮模様(furs):毛皮の模様を図案化したもの。白テン、リスなどの毛皮がもとだと言われている。これらは図形的ではあるが、必ず「色」として扱う。
※新たに紋章を起案する場合はアーミン以外はあまり使用しない方が無難だろう。
・またサポータやクレストといった紋章本体でなけれは灰色、白色、黄色、ピンク色などの比較的自由な彩色が許される。
・表にある「色の象徴」については、資料によってさまざまな解釈があるので参考程度とされた方がよい。
 
Or(金色). Faith(信仰)を象徴する。天体ではSun(太陽)、宝石ではTopaz(トパーズ)に相当する。
Argent(銀色) Innocency(純潔)を象徴する。天体ではMoon(月)、宝石ではPearl(真珠)に相当する。
Gules(赤) Magnanimity(高潔)を象徴する。天体ではMars(火星)、宝石ではRuby(ルビー)に相当する。 
Azure(青) Loyalty(忠誠心)を象徴する。天体ではJupiter(木星)、宝石ではSapphire(サファイア)に相当する。 
Sable(黒) Prudent(慎重)を象徴する。天体ではSaturn(土星),宝石ではDiamond(ダイヤモンド)に相当する。
Vert(緑) Love(愛)を象徴する。天体ではVenus(金星)、宝石ではEmerald(エメラルド)に相当する。 
Purpure(紫). Temperance(節制)を象徴する。天体ではMercury(水星)、宝石ではAmethyst(アメジスト)に相当する。
Tenne(橙色). Dragon's headを表わす。 宝石ではHyacinth(ジルコン)に相当する。
Sanguine(深紅). Dragon's tailを表わす。 宝石ではSardonyx(赤縞メノウ)に相当する。
Ermine(アーミン) アーミン模様()は白テンの毛皮に由来する。
Ermines(アーミンズ) アーミンの亜種。黒色の地に白色のアーミン模様。
Erminois(アーミノワ) アーミンの亜種。金色の地に黒色のアーミン模様。
Pean(ピーン) アーミンの亜種。黒色の地に金色のアーミン模様。
Potent(ポウタント) ポウタントの模様()は巡礼者の杖に由来する。色は白地に青色のT字で描かれる。
Vair(ヴェア) ヴェア模様()は毛皮の模様に由来する。色は白地に青色の毛皮模様。これ以外の複数の色で描く場合もあり、呼称も"Vair"から"Vairy"へと変化する。

2.2 図形(オーディナリ)について。

・オーディナリ(Ordinary)とは、紋章で最も頻繁に使用される単純な線による幾何学図形である。
・形は楯を戦場で使用していた時代の「楯の補強」の仕組みに由来する。このため最初期の紋章の図案にもたくさん用いられている。
・「オリジナル」、「本家」の紋章をデザインする際に広く使用される。
・帯の数を増やすことや、分割線によるさまざまなバラエティがある。
・チーフ以外は、楯より短く描かれる場合もしばしばある。
・十字、斜め十字は小さな図形を数個で描く場合や、(特に十字は)背景として描く場合もあります。
 
Chief(上付き横帯) 楯の上部を占める帯。楯の1/3の幅の太さで描かれる。しばしば具象図形を描くフィールドとして用いられる。
Fess(中央横帯) 楯の中心を水平に横切る帯。楯の1/3の幅の太さで描かれる。これより細い線を2本以上の複数で描く場合もあり、bar(細横帯)、barrulet(極細横帯)などに呼称が変化する。
Bend dexter(右斜め帯) 楯の裏側から見て右上から左下へ斜めに描かれる帯。楯の1/3の幅の太さ。これより細い線を2本以上の複数で描く場合はbendlet(細斜め帯)に呼称が変化する。
Bend sinister(左斜め帯) 楯の裏側から見て左上から右下へ斜めに描かれる帯。楯の1/3の幅の太さ。左斜め帯は「庶子」であることを示す場合に用いられる。
Pale(縦帯) 楯の中心を垂直に描かれる帯。楯の1/3の幅の太さ。これより細い線を2本以上の複数で描く場合もあり、palet(細縦帯)に呼称が変化する。
Chevron(山形帯) 帯が楯の中心から左右に垂れる様子で描かれる。楯の1/5の幅の太さ。これより細い帯を2本以上の複数で描く場合chevronels(細山形帯)と呼称する。
Cross(十字) 楯の中心で縦横に交差する2本の帯。楯の1/3の幅の太さ。十字はキリスト教の象徴的図形であるため、非常にバラエティに富む図形である。[Cross]参照。
Saltire(斜め十字) 楯の中心で斜めに交差する2本の帯。楯の1/3の幅の太さ。十字を斜めにしたもので、装飾については十字と同じ傾向をもつ。

2.3 図形(サブ・オーディナリおよび、たびたび描かれる図形)について。

・サブ・オーディナリとは、オーディナリに比べるとやや複雑な幾何学図形の総称である。
・「オリジナル」の紋章に手を加えて「分家」、「一族」を表現する際などに使用されることが多い。
・描かれる位置が固定されていない図形は数個で描く場合や、水滴模様・長方形のように背景として描く場合もある。
 
Canton(カントン) 楯の後ろから見て右上に配置される方形。楯の1/3の幅。(左が不吉であることからか)一般的に左側に配置することはない。
Quarter(クオーター) 楯の後ろから見て右上に配置される方形。楯の1/2の幅。楯の1/4もの面積を占めてしまうため、現在ではCantonを使用することが一般的になっている。
Inescutcheon(インエスカッション) 楯の中に配置する楯型の図形。単色だけで描く場合や、いくつもの紋章を1つの紋章に組み込む場合に用いる方法としても引用される。複数個描く場合もある。
Bordure(ボーデュア) 楯の縁。1/5の幅。「分家」を表現する最もメジャーな方法として、分割線や繰り返し図形を巧妙に併用する。イムペイルメントする場合、左右の接合面が切り取られる。
Orle(オール) 楯の縁から離れた1重の枠型の図形。傾向は「bordure」と同じ。
Tressure(トゥレシャ) 楯の縁から離れた2重または3重の枠型の図形。傾向は「bordure」と同じ。
Pile(パイル) 楯の上部中央から垂直に垂れるくさび型の帯。帯は楯の1/3の幅で下に伸びるに従って細くなる。くさび型が下から伸びる場合や、数本で描かれる場合もある。
Gyron(ジャイロン) CantonまたはQuarterを斜めに切り取った図形。使用例はあまりない。
Flaunches(フラウンチ) 楯の両脇に配置される半円の図形。左右で一組。中央が尖った直線で描かれる場合や、幅などのバラエティーがある。全般的に使用例は少ない。
Fret(フレット) Frettyから派生した英国独自の図形。二本の帯を中央で交差させ、中抜きの菱形を互い違いに絡ませた図形。釣り網が由来とされる。
Pall(Y字) Y字。この図形は教会の祭服に由来する。そのため十字同様宗教的意味あいが強い。
Shakefork(短かいY字) 短いY字で、三つの腕の先端は尖っている。スコットランドで見られる図形。
Baton(短い斜め帯) 短い斜め帯は、オリジナルの紋章に付け足すことで庶子を表す場合に用いる。金属色の場合は特に王族の庶子を表す。
Label(レイブル) 楯の上部の横帯と下に垂れる三本の腕からなる図形。腕の数は通常奇数で、三本以上で描かれる場合もある。欧大陸では台形()が一般的。英国では長男を表す記号としても用いられる。
Mullet(星) 星は指定が無ければ五本の腕をもつ。中心に小さな丸い穴が空いて(pierced)、下地の色を覗かせる様子で描かれる場合もある。頻繁に描かれる。
Billet(長方形) 小さな縦長の方形。無数の長方形をちりばめた様子(Billetty)で描かれる場合が多い。似たような図形には三角(Triangle)、正方形(Delf, Cube)などがある。
Lozenge(菱形) 菱形。この他にfusil(より縦長の菱形)、mascle(菱形の格子)、rustre(中央を丸く刳り抜いた菱形)がある。頻繁に描かれる。
Annulet(輪) 輪。数個で描く場合は、輪が交差したり、癒着した様子で描かれる場合もある。頻繁に描かれる。
Gurges(うずまき) 楯の中心から発生し円を描きながら外側に描かれる渦巻き。本来は銀の地に青。のちには自由な配色に変化した。あまり描かれることはない。
Gouttes(水滴模様) 水滴模様()は色によって図形の表現している意味が変化する。金(金)、水滴(銀)、血(赤)、涙(青)、タール(黒)、油(緑)。
Roundles(丸) 丸。色で名称が変化する。bezant(金)、plate(銀)、torteau(赤)、hurt(青)、pellet(黒)、pomei(緑)、golpe(紫)。頻繁に描かれる。

2.4 分割図形

・オーディナリに準ずる単純な分割図形です。
・「オリジナル」の紋章をデザインする際に広く使用される。
・2分割するする図形は、まれに3分割(tierced in)して使用される場合もある。
・分割面は「分割線」で装飾されることがある。
 
Per fess(上下分割) 楯の中心から水平に2分割される図形。
Per pale(縦分割) 楯の中心から垂直に2分割される図形。
Per bend(右斜め分割) 楯の右斜めから2分割される図形。
Per bend sinister(左斜め分割) 楯の左斜めから2分割される図形。
Per chevron(山形分割) 楯の下部が山形に2分割される図形。
Quarterly(十字分割) 楯の中心から十字に4分割される図形。
Per saltire(斜め十字分割) 楯の中心から斜め十字に4分割される図形。
Gyronny(ジャイロニー) 楯の中心から放射状に分割される図形。分割数は6分割以上の偶数で分割される。6分割は縦に分割してから、それを更に斜め十字に分割。

2.5 繰り返し図形

・オーディナリ、サブ・オーディナリに準ずる単純な繰り返し図形。
・このうち、オーディナリに準ずる図形は「オリジナル」の紋章をデザインする際に広く使用される。
・視認性を高めるためか、原色同士よりも、金属色と原色の2色の組み合わせで描かれる場合が多い。
・帯状の繰り返し図形は、繰り返しの合計が必ず偶数になる
 
Barry(横帯) 横帯状の繰り返し図形。
Paly(縦帯) 縦帯状の繰り返し図形。
Bendy dexter(右斜め帯) 右斜め帯の繰り返し図形。
Bendy sinister(左斜め帯) 左斜め帯の繰り返し図形。
Chevronny(山形帯) 山形帯の繰り返し図形。
Chequy(市松模様) 方形の繰り返し図形。
Lozengy(菱形模様) 菱形の繰り返し図形。
Fretty(フレッティー) 斜め格子の繰り返し図形。格子は交互に編み込まれる様子で描かれる。
Gobony(ゴボニー) 方形の繰り返し図形。帯上にある1列の方形が交互に色違いで繰り返される。2列の方形を交互に色違いで描く場合もある(それ以上は市松模様となる)。
Masoned(レンガ模様) レンガ状の繰り返し図形。あまり使用されていない。

2.6 分割線

・分割線はオーディナリ、サブ・オーディナリの図形のバラエティを更に広げる目的で使用される。
・単調になりがちな紋章の図形に、装飾として引用することで華やかさが増すという効果があります。
・横帯(fess)などでは帯の上と下が、それぞれ別の分割線で描かれることもある。
 
Embattled(凸凹状の分割線) 境界を凸凹状に分割する線。下のBretessedより一般的。
Bretessed(凸凹状の分割線) 境界を凸凹状に分割する線。Embattledに比べると幅が狭くなっている。
Raguly(枝を断ち切った木の様な
分割線)
境界を枝を断ち切った木の様に分割する線。用いられるのは縦帯(Pall)や斜め帯(Bend)が圧倒的に多く、「木」そのものを意味している場合が多い。
Dancetty(ノコギリ状の分割線) 境界をノコギリ状に分割する線。
Indented(ノコギリ状の分割線) 境界をノコギリ状に分割する線。Dancettyより小刻み。
Dovetailed(凸凹の根が細くなった
分割線)
境界を鳩の尾(Dove tail)のように分割する線。
Engrailed(半円でえぐった分割線) 境界を半円でえぐった分割線。
Invected(半円を付け足した分割線) 境界に半円を付け足した分割線。
Champaine(Vair紋様の分割線) 境界を剣先()の形状で分割した線。
Undy or wavy(波状の分割線) 境界を波状で分割した線。
Nebuly(波状の分割線) 境界を波状で分割した線。

2.7 ふたたびここで、基本的な構成は?その2

マーシャリング(Marshaling)/クオータリング(Quartering):2つ以上の紋章(爵位、国土など)を1つの楯型内に描くこと。クオータリング(quartering)(4分割した楯型に複数の紋章を描く)などもこれにあたる。
イムペイルメント(Impalement):2つの紋章を1つの楯型内の右左にそれぞれ描くこと。夫婦の紋章を一緒に描く場合や、特別な地位に就いている間、任期中に地位をあらわす紋章と一緒に描かれる。
アリューシブ(Allusive)/パニング(Punning)/カンティング(Canting):持ち主の名前を想像できる図案を紋章に取り入れること。分かりやすく説明すると「駄洒落」。意外と多く用いられる。
違反紋章(False heraldry, Metal on metal, Colour on colour):金属色の上には原色。原色の上には金属色。という紋章の色の配置についての最も基本的な法則に違反している紋章。
※あなたも公共的な看板で白地に黄色の文字の組み合わせを見て読みにくいと思った経験があるのではないでしょうか?金属色の重ねあわせは見づらいだけでなく、老人などでは特に色が黄色がかって見える特性があるため、このような色の組み合わせでは判別が困難です。
※紋章に限らずこのような場合も適切な色(原色)を使用するべきです。但し、分割図形では文字どおり分割した図形なので、金色と銀色のパー・フェスなどは違反紋章になるわけではありません。
ケイデンシー(Cadency)/ディファレンシング(Differencing):「親子であっても同一紋章は創り出さない」という原則があるため、、図形などを加えて、オリジナルの紋章との差別化を図る。図形の色を変えたり、分割線を変えて装飾してみたり、サブ・オーディナリを加えたりと、手法はさまざまである。
シンプルな紋章と複雑な紋章: 名門と呼ばれるような貴族の紋章というのは普通シンプルなデザインであることが多い。これは紋章の制度が発生してから、まずシンプルな紋章から使用され、 時代が経つにつれ序々に複雑になっていった経緯があるため。いっぽう、複雑な紋章には2つあって、1つは傍流であるとか後の時代になって新たに紋章を起こ した場合と、もう1つはマーシャリングによって複数の起源をもつ紋章を1つの紋章に描く場合である。
右(Dexter)、左(Sinister): 読んで字の如し。ただし紋章学で、右左という表現は、「紋章の後ろから見て」という表現になる。楯型を人間に見立てて、「右手」、「左手」と表現すればわ かりやすいかな?動物や怪物などを横向きに描く場合たいてい(楯の後ろからみて)右向きに描く。これは紋章学では左側を「劣る」ものとしているから。
※まあ普通に(向かって)右向きに描ける人は少ないだろう。これ はデザイン上重要なことで、美しい写真(たとえば山の風景、たぶん山は右側にあるでしょ?)を左右逆(もちろん看板類の文字は別として)にしただけで、な んとも不安な印象をもつ写真に様変わりする。左右を入れ替えるということは、単に絵柄を入れ替えるということではなく、印象も大きく変わるということなの だ(確か「終止感」とかいうキーワードで括られていたと記憶している:未確認)。普通、人が頭の中で描くイメージというのは、どんな人でもある程度決まっ ていて、そのイメージに逆行するということは、相手に不安感を与えるということなのだ。横顔ならば(向かって)左向きに描かなきゃダメなんだ。
※以前雑誌で、「(むかって)左向きの人の横顔を描くのは簡単だ けど、逆向きの顔を描くのが難しいのは何故か?」という質問の解答に「右利きの人が描いたから」なんていうとんでもない解答を読んだことがある(しかもこ れって割と有名な芸術論評誌なんだぜ!)。これについても、上の解説で説明がつく。「描く」という作業も、「イメージする」という作業が前提だからね。
自然色(Proper):具象図形(charge)が描かれた場合に、例外としてまれに動植物を自然な色合いで彩色する場合がある。 しかしながら、人間の膚色以外は描かれる図形にはたいてい決まった原色での色彩構成がある。
※人間の膚色というのは人の目には非常にタイトに写るらしい(理由?分かるよね)。これを読んでいる人でもテレビの色彩調整でわずかに色がずれただけで人の膚色が奇妙に感じたことがある人も多いと思う。
カウンターチェンジ(Counter changed):色の入れ替え。縦に分割した紋章をデキスター側を銀色、シニスター側を黒色で彩色し、その上に山型帯の「カウンターチェンジ」で彩色するという場合は、帯の左が黒色、帯の右が銀色といった風に下にある色と入れ違いに彩色される。
フィールド(Field):楯型の平面。基本的には「金、銀」などの金属色や「赤、青、黒、緑」などの原色、「アーミン」などの毛皮模様を用いる。その他には、繰り返し図形で複数の色を用いる場合もある。さらに長方形、十字、丸、フラ・ダ・リなどといったように、図形をちらばめる場合もある。
 
GREAT BRITAIN. Marshalling(マーシャリング) 左の例は英国王の紋章。第1・第4クオータに「赤の地に3匹の金色のライオン」、第2クオータに「金の地にイチハツ紋で装飾された赤の二重枠に囲まれたライオン」、第3クオータに「青の地に金のハープ」がマーシャリングされている。
John KEMP. Impaling CANTERBURY. Impalement(イムペイルメント) 左の例はカンタベリ大司教John KEMPの紋章。左側がタンタベリ大司教の地位を表している。
JERUSALEM. False heraldry(違反紋章) 左の例はイエルサレム王国の紋章。銀の地に金の十字という、紋章のシステムが充分に確立するより前に採用されたものなので、例外の紋章として認められている。
TREMAYNE. Proper(自然色) 左の例はTREMAYNEの紋章。人間の手の色が、自然色(膚色)で彩色されている。
S.BARTHOLOMEW'S Hospital. Counter changed
(カウンターチェンジ)
左の例は聖バルトロメオ・ホスピタルの紋章。Chevronの色が下の色と入れ違いに彩色されている。

3.具象図形(charge)

・動植物や静物などの具体的な図形も紋章に描かれる。これらは一般的に具象図形 - チャージ(charge)と呼ぶ。
・ライオンや鷲、草・木・花などの動植物や幻獣。船、橋などといった静物・乗り物・建築物、川、海といった景観などの広範囲にわたって描かれる。基本的に何でもアリ。
・オーディナリ、サブ・オーディナリと組み合わせて使用される場合も多い。
・動植物や城といった、たびたび描かれる図形ではたいてい決まったポーズがある。
・最もよく描かれる具象図形としては以下がある。
 
ENGLAND. ライオン(lion) 左の例はイングランドの紋章で、警戒する(正面を向く)3匹の歩くライオンが描かれている。百獣の王ライオンは、ヨーロッパ王族の紋章に、たびたび描かれている。
GERMAN EMPIRE. 鷲(eagle) 左の例はドイツ皇帝の紋章で、後光を頂く双頭の鷲が描かれている。鷲は鳥類の王者である。
FRANCE. フラ・ダ・リ(fleur-de-lis) 左の例はフランス王の紋章で、3個のフラ・ダ・リが描かれている。イチハツ紋()はユリの花が由来とされる。

3.1 獣類(beasts)

・ご存知の通り百獣の王ライオン(lion)はヨーロッパの王族もこぞって紋章に採用している。このため最もポーズが細かく規定されている。
・鹿(deer, stag)、牛(bull, ox)、馬(horse)、猪(boar)、山羊(goat)、熊(bear)、象(elephant)、猿(ape)、犬(dog)、狼(wolf)、狐(fox)、猫(cat)、その他多くの種類の獣が描かれる。
・いくつかの決まったポーズがある。
・「ライオンの顔」や「鹿の角」という体の一部分だけの描かれ方もたびたびある。

3.2 鳥類(birds)

・鳥類の代表は鷲(eagle)であり、双頭の鷲も多くみかける。ルーツは神聖ローマ帝国の鷲に由来する。
・鳩(dove)、梟(owl)、ペリカン(pelican)、鶏(cock)、その他。
・単に鳥(bird)と表現される場合もある。
・具体的な種類の鳥が描かれる場合は、逸話や固有名詞にかけあわせてある場合が多い。
・獣と同様にいくつかの決まったポーズがある。
・「翼」(wing)という一部分だけの描かれ方もよくある。
・ダチョウ(ostrich)は羽(feathers)のみがたびたび表現されるがダチョウそのものが描かれる場合は少ない。

3.3 魚類(fishes)

・古い分類体系のため魚類にはイルカ(dolphin)も含まれる。陸上の王者ライオン。空の王者鷲。ならば海の王者はイルカというわけ。紋章に特化した図形で描かれる(古地図でもよく見かけますね)。ただし実際の使用例は多くない。
・魚類の場合は具体的な魚名が記されず、単にfish(魚)とだけ表現される場合も多い。その分描かれかたも、かなりぞんざいだったりする。
・具体的な種類の魚が描かれる場合は、逸話や固有名詞にかけあわせてある場合が多い。
・いくつかの決まったポーズがある。

3.4 怪物(monsters) - 人型以外

・竜(dragon)は一般的には4本足を思い浮かべるが、これはイングランド方式。ヨーロッパ大陸では2本足が一般的。
・グリフィン(griffin)もたたびたび描かれる。原形は中央アジア遊牧民族まで溯られ、古代ギリシャとの交易でギリシャ・ローマ神話に取り込まれたらしい。
・鶏竜(basilisk or cockatrice)。ワイバーン(wyvern)。
・タイガー(tiger)(本来は紋章に特化した図形)、アンテロープ(antelope)、一角獣(unicorn)、不死鳥(phoenix)、サラマンダ(salamander)。
・たいていいくつかのお決まりのポーズで描かれる。
・羽が生えた動物なども含まれる。有翼ライオン、有翼牛など。
・ギリシャ・ローマ神話に出てくる怪物も多くみかける。ペガサス(pegasus)など。

3.5 人型(humans)

・人間(man)が描かれることもあります。幼児(infant)、黒人(black)なども。顔(face)、目(eye)、手(hand)、足(leg)の場合も多い。
・骨(bone)、骸骨(skull)もよく見かける。
・天使(angel)。智天使ケルビム(cherub)は子供の顔に2つの翼という紋章に特化した描かれ方をする。
・聖人(Saint)。背後に後光(nimbus)が差している。聖ジョージ(George)(世界各地で奇跡を起こすことで有名)が代表格。
※全く一般的ではないが、プレスター・ジョン(Prester John)とそれにまつわる逸話というものも面白い。原形はチンギス・ハーンといわれている。中央アジアの遊牧民族というイメージからは程遠いが側近がキリスト教徒だったらしく、情報が曲がって西洋にもたらされたらしい。
・人魚(mermaid)もよく描かれる。
・ハーピー(harpy)、サティルス(satyrs)などの人獣。悪魔(devil)。

3.6 その他の生物(other lives)

・アリ(ant)、蝶(butterfly)、バッタ(grasshopper)などの昆虫類。
・昆虫類の代表に蜂(bee)がある。皇帝ナポレオンが自分の臣下にミツバチの加紋章を与えたというのは割と有名。でも不評だったそうな。
・ほたて貝(escallop)は巡礼の象徴であるため、たびたび描かれる。
・へび(snake)、とかげ(lizard)、かめ(tortoise)、えび(shrimps)、かに(crab)、かたつむり(snail)、かえる(frog)、おたまじゃくし(todpole)。サソリ(scorpion)なんてのも。

3.7 植物(plants)

・イチハツ紋(fleur-de-lis)(紋章に特化)。フラ・ダ・リはユリの花に由来するといわれる。フランス王の紋章として有名。
・バラの花(rose)(紋章に特化)。
・花(flower)。
・葉(foil)、三つ葉(trefoil)、四つ葉(quatrefoil)、五つ葉(cinquefoil)。
・木(tree)、枝(branch)、切り株(snag)。
・果実。りんご(apple)、ぶどう(vine)、ざくろ(pomegranate)、その他。
・花冠(chaplet)。キリストが冠されたイバラの冠(Crown of Thorns)。

3.8 景観(landscapes)

・月(moon)(半月、満月)。顔が描かれる場合もある。
・太陽(sun)。顔が描かれる場合もある。光の放射、雲なども同時に描かれる場合がある。
・星(star, estoil)。腕はぐにゃぐにゃ曲がった姿で描かれる。
・虹(rainbow)、雲(cloud)、雷霆(thunderbolt)。
・山(mount, mound)、丘(hill)、森(wood)、陸(land)、島(island)。
・川(river)、海(sea)、泉(fountain)、雨(rain)、水滴文様(gouttes)など。

3.9 その他の静物(other objects)

・城(castle)や落とし格子(portcullis)はたびたび描かれる。
・橋(bridge)、協会(church)、寺院(temple)などの建築物。
・いかり(anchor)や船(ship, lymphad, galley)(これもよく描かれる)などの乗り物。
・旗(flag)、鎧(armour)、ヘルメット(helmet)、矢(arrow)、剣(sword, sabre)など戦場で用いるものも多い。
・冠(crown)や帽子(cap)。
・花瓶(vase)や宝石類(jewel)。
・紋章はキリスト教圏で発達したものなので、キリスト教の儀式や宗教的に特別な意味をもつ物も多く見受けられる。聖カタリナの車輪(wheel)、聖ペテロの鍵(key)など。
・ロープ(rope)。結び方に意味をもつ。
・文字(letter)。(Chargeに含めてしまってよいのか、いささか疑問)
・特別な意味を持つ幾何学図形。かぎ十字(fylfot)(輪廻転生をあらわすらしい)など。
・その他、書ききれない程たくさんある。

3.10 その他の静物(heraldic objects) - 紋章に特化した図形

・矢じり(pheon)。
・羊飼いなどがもつ水入革袋が変化した図形(water-bouget)。
・狩りに用いるラッパ(bugle-horn)。
・女性の服の袖が原形といわれている(maunch)。
・その他にもいろいろある。

4. デザインするにあたって

4.1 デザイナが紋章学を学ぶことの意義は?

・紋章はデザインの最も基本的な部分が系統化されています (色のルール、幾何学図形のデザイン、動植物・怪物のデザイン、宗教的な図形、歴史的な図形、構成、表現方法などなど)。紋章学を学ぶことはこれらの膨大 なデザインのリソースにアクセスするということです。これだけ広い知識を必要とするデザインは他にないでしょう。
・紋章学のルールに従ったデザインができるということは、あなたの経歴に乗せることができる位のインパクトは持っている思います。顧客が紋章学を知らなくても、「紋章」という言葉や絵柄でヒアリングのきっかけになったり、ニーズを引き出せるでしょ?
・紋章学のデザイン知識とWWWデザインの知識は本当に似通った部分がたくさんあります。これは「戦場」と、「ディスプレイ」という違いはあるけど、どちらも「劣悪な視覚環境」での可読性の向上を目的としていると言えるかもしれないね。

4.2 書籍やCD−ROMに載っている紋章の図版のデザイン、そのまま使ってもいいのかな?

・書籍/CD−ROM類本体の著作権の解決が必要です。たいていの場合ライセンス条項があるでしょうから、そちらを参考にしてください。
・そしてもう一つは、「紋章の図案の持ち主」の権利について考え なくてはならないでしょう。紋章は膨大な調査が行われてから発行が行われます。発行料も必要です。ことさら「特徴のある紋章」については利用する際に配慮 しなければならないでしょう。紋章の意匠は「企業トレードマーク」に近い扱いと考えた方がよさそうです。
・総合的に判断すると「新たに図案を作成する」方が賢明のようですね。

4.3 紋章的な「複雑さ」について

・もしあなたがゲームソフト制作会社の社員であり、紋章についてデザインしなければならないときに「紋章の複雑さ」についていろいろ考慮しなければならないでしょう。
・たとえばRPGのゲーム設定で、物語の中にでてくる「国家の紋章」の性格付けについて、
※攻撃的な国家であれば、国家の統廃合が進みマーシャリングといったように紋章の組み合わせが複雑なものになっているでしょう。
※平和を愛する国家であれば、紋章の組み合わせは少ないか、1つだけの平凡なものになるでしょう。
※文化的に充実している国家であれば、特に「大紋章」といった装飾的に華やかなものであるべきです。
※文化的に遅れている国家であれば、もしかすると紋章はなく単に一族の「鷲のマーク」だけかもしれません。
※文化的交流の少ない国家同士では国内の紋章のデザインの傾向が大きく(例えば日本と西洋の紋章のように)異なっているでしょう。
※古代遺跡からは、現在の紋章のルールを大きく逸脱した紋章が見つかるかもしれません(違反紋章であるとか、楯の形がヘンとか)。
・これらは実際の紋章制度がどうであるかとは別に、クリエータとして自然に思い浮かべるセンスは必要ですね(逆に、これくらい思い浮かばないようであれば、クリエータとしての資質は無いと思ったほうがよさそうです)。
・紋章では階級によって使用できない部品があったり、逆に特定の階級では必ず付かなければならない部品があったりする。これらは国や時代や地域によって変化します。紋章を起こす場合はデザインにとりかかる前にこれらの設定を行い、首尾一貫してデザインするべきです。

4.4 店舗のアイデンティティとして

・ありがちなのが、「高貴さ」を演出するため、複雑でご ちゃごちゃした紋章をデザインしてしまうという傾向があるということ(意味の無い4分割であることが多いのは、なかなか興味ある傾向ではある。おそらく今 現在もっとも目にする「英国王室の紋章」の影響であろう。店舗に限らず、「複雑な紋章」を描く場合は、むしろ「ロシア帝国の紋章」を参考にするのが、いい のではないかと思う)。
・ただ、これだと相手(=顧客)に店の特色を訴えにくいし、インパクトが与えにくく、記憶に残らないこと請け合いです。
・店舗の特性を生かした図形を1から3くらいを限定して選び、単純で分かりやすい具象図形を決定したほうが良いでしょう。
・高貴さの演出は「大紋章」で醸し出しましょう。

4.5 実際のデザインについて

・ポスターなどの物語性のある絵柄ならば紋章の彩色では原色そのままではなく、ややくすんだ色を使用した方がいいでしょうね。
・ホームページなどでインパクト勝負の画像が必用ならば、それは原色で彩色した方がいいでしょう。また、こうすることで画像ファイルのサイズが小さくすることができるので、ダウンロードを早く済ませることができます。
・楯型の枠線がきっかり直線なのはちょっとね・・・・・。やぱし手書き風なのが味が出ていていいですね。
・下絵は定木で描くとして、ペン入れは手書き。そしてスキャナでPCに取り込む線が妥当です。そしてクラシカル調と原色調の2つを彩色して、それを用途に応じて使い分ければいいでしょう。
・一般的には部品毎にデザインしたものをPC上でドッキングさせるといった手順をとることになると思います(実際の作業は、「CGの描き方」のような専門書にお世話になりましょう)。

5.リソースについて

5.1 国内で比較的入手が容易なリソースにはどんなものがありますか?

・「西洋の紋章とデザイン」森護著 ダビッド社 ISBN-8048-0148-0
※紋章の基本構成とデザインする際の注意点が細かく載っています。
※これに書かれていることを忠実に守れば、一般的な紋章のデザインが可能です。
※紋章を専門的にデザインする人には最初のバイブル的存在になるでしょう。

・「西洋の飾り紋」M・ヴァイサー著 マール社 ISBN4-8373-0612-8
※Fairibairn's crest of the Families of Great Britain and Ireland, [初版1859発行]の飾り紋総覧から図版を分類、一覧形式に収録したもの。内容は図版が中心です。モノクロのみ。
※紋章学の簡単な解説がついています(ただし解説の内容はデザインの参考としては役不足です)。
※これ一冊で動植物の一般的な描きかたや、西洋竜や、グリフィン(グリフォン)などの描きかたが理解できるでしょう。

・「HERALDRY - A pictorial archive for Artist & Designers -」ドーバー・ブックス ISBN0-48626-906-X
※デザイナーのための図案集を多数出版しているドーバー社による紋章図案集です。洋書ですが地方でも大型書店では入手が容易です。輸入販売元は嶋田洋書。
※内容はThe ART OF HERALDRY(FOX-FAVIES著、John.B.P.Brooke-LittleによるRevised版)から図版のみ抜き出したもの。
※若干のカラーページを含んでいます。

・その他にもあるようですが、いずれも小振りであまり参考になるとは思えません。
・とりあえず上の物をフォローし、その後具体的な描きかたをインターネットで探し回るのが賢明な方法だと思います。

5.2 日本語の解説ページ

・小竹岳次郎さんによる「能登屋岳次郎商店」の「紋章学入門」は、図版と共に詳細な解説がしてあるので紋章を理解してゆくのに非常に分かりやすい構成になっています。
[能登屋岳次郎商店]
http://www.uckies.net/notoya/
[紋章学入門]
http://www.uckies.net/notoya/heraldry/herald.html

5.3 英文が分かるならこちらをどうぞ。

・オープンライブラリ・プロジェクトによりデジタル化された書籍
[The art of heraldry] Fox-Daviesによる紋章の芸術性に焦点を絞って解説してある書籍です。1904年出版。
http://openlibrary.org/books/OL22973261M/The_art_of_heraldry

[Heraldry for craftsmen & designers] 工芸職人やデザイナーへ向けた書籍になっています。1913年出版。
http://openlibrary.org/books/OL13519842M/Heraldry_for_craftsmen_designers
建築物やモニュメント、織物、勲章などについても言及されているので、紋章の入門書にはない面白さがあります。
また、ヨーロッパ中世を舞台にしたゲームのデザインなどにも応用できそうです。

・紋章学全般
[International Heraldry & Heralds ]
http://www.internationalheraldry.com/

・紋章のデザインの仕方(ブログ)。
[CastleLyons: How to Create a Coat of Arms]
http://castlelyons7.blogspot.com/search/label/coat of arms

・私のページですが、図版を探すのには最適だと思います。
[A GLOSSARY OF TERMS USED IN HERALDRY]
http://www7b.biglobe.ne.jp/~bprince/hr/parker/indexj.htm

・リンク集
[open directory project/Heraldry]
http://dmoz.org/Society/Genealogy/Heraldry/
[Links and bibliography for heraldry(Some notes on medieval English genealogy)]
http://www.medievalgenealogy.org.uk/links/herrefs.shtml
[Heraldry Links-A Free Learning Resource]
http://www.heraldrylinks.com/


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