1月4日 朝ごはんはシリアル、トースト、フルーツ、ヨーグルト、紅茶。今日は待ちに待った乗馬の日だ。昨日予約してもらった、車で20分ほどの乗馬クラブに行く。着いてみるとそこは松林の中の広場で、建物は何もなく、馬を運んできたトラックがあるのみ。これを称してなんというべきか。予約してあったので話はすぐに通って私たちの乗る馬はすでに鞍をつけて準備OK。今日は昨日とは打って変わって空は雲に覆われ、物凄い風が吹いていたが、いざ馬に乗ろうというときになって、ザーッと雨が降ってきた。そんなぁ、この雨の中でhorse treckingなんて無理? でもごっついコートを借りていたので何とかなるかな? 雨はまもなく小ぶりになり、世話をしてくれるLauraともう一人の若くてかっこいい男性はなんともない風で「乗って乗って」と言う。 乗ってから手綱の扱いを教えてもらう。歩かせる時は手綱を緩め、右に行かせたいときは右、左に行かせたいときは左、止まれは左右を同時に引く。とてもおとなしい馬よ、大丈夫、私の後についてきてね、と説明された。まさきにも同様に説明していたようだが私とは離れていたのでfollowできない。おとなしい馬だから大丈夫よね、と高をくくったのだがあとで後悔することになるのであった。 さっそく松林を抜けてビーチへと向かう。馬の歩行は微妙に上下動があってうまくリズムをつかまないとお尻が痛い。最初は腰に響く感じがして少し心配だったが、だんだん慣れてきた。今日は海も風のせいで大荒れだ。波が激しく打ち寄せていて迫力の光景。 ビーチをしばらく歩くうちにまさきの馬がいきなり私の馬に首をぶつけるようにして私の馬が急に向きを変えようとし、さらに走り出しそうなそぶりを見せたのであわてて手綱を引いた。「だめだめ!」と馬をなだめてやっと落ちついたところでまさきを見たら...まさきを乗せて馬が海に向かって走ってる!! 凍りついて見ているうちに馬は向きを変えて円を描くようにターンし、さらに走っていく。まさきが必死でしがみついているのが見えるが何もできない私。「まさき!手綱を引くのよ!引きなさい!」と叫んでみるが聞こえているのかいないのかだんだん鞍からずり落ちるのが見える。がんばれ!と念ずるしかない。そしてついに背中から浜に落っこちた。あぁ、頭を打たなくてよかった、とひとまず安心。 しかし、50mほど離れたその場所に行くすべのない私である。止まる方法は教わったが、歩き出させるにはどうするか聞いていない。そして一人では馬から下りられない。あとでわかったが、「進め」は横腹を蹴るのであった。 Lauraと浜にたまたまいた数人が駆け寄ってまさきを助け起こしてくれているのが見えた。泣いてる、まさき? こっちへ来るまさきの顔がよく見えないが歩いているということは大怪我ではないはずだ。近づいてきたまさき、かなり痛そうな顔をしている。でも、内臓破裂とか骨折とかではまずないだろう。ただ、始まったばかりの段階でこのアクシデント。もう乗りたくないというんじゃなかろうか。Lauraはここからは馬の首につけた綱を引きながら行ってくれるといい、まさきもおとなしくもう一度馬に乗せてもらった。あと1時間半以上も乗るのに大丈夫かな? さて、走り出しちゃった馬はいつもはとてもおとなしくて絶対にこんなことはないらしい。ではなぜ今日に限って? 実は私たちの後を若い男性がもう一頭の馬を引いてついてきていたのだが、この馬は新人(新馬?)だったらしく、どうもBecky(まさきの馬)がこいつにちょっとガンをつけたということのようだ。新入りが生意気だったのか、Beckyがお局様だったのか。やれやれ馬の世界も人間と同じなのね。とばっちりを食ったまさきはかわいそうだったけど、こんな経験もNZならでは。馬を走らせたいと思ったって初心者にできるものじゃないのだから。怪我もたいしたことなかったし、まぁ、よしとしましょうか。 それにしてもつくづく思ったのは、馬は生きているってこと。当たり前だけど、感情の起伏もあるし対人(馬?)関係が精神状態に影響を与えるのは人間と同じ。人間以上にいつもと違う出来事には敏感なようだ。でも静かに声をかけて、こちらの意思を伝えようとすると伝わる気がした。機械じゃない分思い通りにならないこともあるけどお互いのことがわかるようになってきたらこれほどかわいい生き物もいないかも。馬に魅了される人の気持ちがわかる気がした。 気を取り直してhorse treckingは続く。浜から草地へ、さらに林の中へと歩をすすめて行く私たち。空がどんよりしているのでなんとなくおどろおどろしい雰囲気だ。林の脇の道で何かが動いた!と思ったらピョンピョンッと走り出してきたのはウサギちゃん。耳の一部が白くてよく目立つ。野生のウサギ、初めて見たかもしれない。まさきはこれで機嫌が直ったかな? 私は最後尾なので顔が見えない。Lauraが時々振り返ってまさきに「痛い?」と聞いてくれるが、なんと答えているやら。彼の背中はまだなんとなく元気がない。 所要2時間ずっと馬に乗っているのは結構大変だ。私の馬は歩きながら時々道端に生えている草をむしって食べている。前の2頭はあまりしていないところを見ると、乗っている私が馬に慣れていないと見てナメているな。でも草くらい食べてくれていいよ。まさに「道草を食う」ってやつだなこれは、などと考えながら行く。しかし、馬ってあんなにきりりとしたたたずまいなのに、歩きながら大を落としていくのが意外だ。そしてブツは鹿のようにポロポロではなく、緑色のべしょべしょで自分の後足や臀部にもかかっちゃったりして(きたなくてごめんなさい)。私には後ろから丸見えで、ウームという感じ。これも生きてる証拠だけど。 2時間たつとさすがに尻が痛くなる。特にたまに馬が小走りになる時、のんびり鞍に座っていると尻の肉がピキピキ痛む。あぶみの上に立つ感じで乗ると少し楽だということがわかった。本当にたっぷり2時間乗って、再びビーチを通ってもとの松林に戻った。降り方を教わって今度はほぼ一人で降りられた。馬から下りる正しい方法:まず右足をあぶみから抜き、続いて左足も抜いたら右足を馬の尻側から回して両足を馬の横腹にそろえ(一瞬両手で体重を支える形になる)そのまま両足で飛び降りる。左足も抜くのは、万一馬が動き出した時足だけが馬と一緒に持っていかれるのを防ぐためであろう。 Lauraがしきりにまさきが馬から落ちたことで謝ってくれた。私がきちんと手綱の扱いを通訳しなかったのも悪かったと思う。ごめんねまさき。 帰る途中でDelwynがカツオドリのcolonyに連れて行ってくれた。海に向かって切り立った崖の上に鳥がいっぱい!見やすいようにcolonyのすぐ上にバルコニーのように展望場所が作られていて、もう成鳥と同じくらいの大きさになった雛鳥が親から餌をもらっているのまでよく見える。彼らは冬の間はオーストラリア東岸の辺りにいて、夏に向かって子育てのためにNZに渡ってくるのだ。 ファームに帰ってきたが、まさきはかなり背中が痛むようだ。まさか肋骨にヒビ、なんてことないよね...と不安になってきた。とりあえずDelwynが用意してくれたアイスパックを背中に当ててベッドで一休み。すぐに寝入ってしまった。まもなくDelwynの娘のRisaが5ヵ月半の赤ちゃんElleを連れてやってきた。私は部屋にいたので最初姿が見えず、赤ちゃんの声がするので見に行くと、Risaはお母さんの作ったパスタを食べていた。私が後ろから急に声をかけたのですごくびっくりして飛び上がっていた。やだ、ごめんなさい。Risaはお母さんからまさきの落馬のことを聞いていたらしく、「かわいそうに、怖かったでしょう。よくわかるわ。」と言ってくれた。馬に乗れるからこそ怖さがわかるのであろう。 Elleは絵に描いたようなキュートな赤ちゃんだ。ブルーの目、ぷっくりしたほほ、ムチムチの手足。まだハイハイができないのだが、もうちょっとでできそう。目の前に興味を引くものを置いて、”Push! Push!”とみんなで励ますが、足は空しく宙を掻くのみ。その姿がまた愛らしい。 さて、まさきは1時間ほどで目を覚ました。まだ痛いようだ。どうしても心配なら救急に行く?ときかれたがそれはそれで不安な私である。医学用語なんてわからないし、大事なことを聞き漏らすかもしれないし。まさきも、医者に行くかも、と聞いただけで泣きそうになるほど不安がっている。結局持ってきた解熱剤(鎮痛作用もあるはず)を飲ませて様子を見ることにする。 もう一眠りして起きてきたまさきは意外と元気で、今日も絵を書くというので一緒にお庭でスケッチ。本日の絵葉書の出来上がり。そのあとケイシーのお散歩にも行くという。この分なら大丈夫かなと安心した。 夕食はチキンのクリームチーズ&ドライトマト巻きをさらにベーコンで巻いて焼いた一品。そして、サラダ、ポテト(ローズマリー入り)。これがまたおいしいのだ。デザートはブルベリーマフィン。そして今日は白ワイン(シャルドネ)。これもおいしい!またもや大グラスに1杯を飲み干した。 今日はお洗濯もしたのだが、強い風で裏庭に干したら2時間で乾いた。ランドリーコーナーは別棟になっていて洗濯機を自由に使っていいのだ。便利。 |