北京オリンピック 柔道に思う

2008年8月20日

この夏はオリンピックで盛り上がっています。時遊人(自由人)になって時間に余裕ができたので、じっくりテレビ観戦ができるのです。開会式前のサッカーに始まり、開会式、柔道、競泳、体操、レスリング・・・。

どれも日本勢の活躍を期待しながらの観戦ですが、フェルプス選手の競泳8冠達成や陸上100mでのボルト選手の驚異的な世界記録更新など、国を意識することなく素晴らしい競技内容に惹きつけられています。

その中で最後までスッキリしないまま見ていたのが柔道です。メダルが期待された日本選手の予想外の敗退がありましたが、その事ではありません。試合の内容に疑問を感じたのです。

女子48キロ級の谷亮子選手が準決勝で敗れた試合では、一度も組み合うことがないまま指導のポイント差だけで勝敗が決まりました。専門的なことはよく分かりませんが、危険を冒して一本勝ちを狙うよりも、小差でもいいのでポイントを取ってそれを守り抜く、というような試合が多く見られたように思います。

数日前にNHKの「ようこそ先輩」で古賀選手の一本勝ちのシーンが流れていました。それを見て「美しい」と感じたのですが、今回のオリンピックでは一本勝ちのシーンでもそういう美しさは感じられませんでした。ポイント狙いの柔道がそうさせているのではないかと思ってしまいました。

そこで素人の勝手な提案ですが、最初の5分では「技あり」以上の差がなければ延長にするというのはどうでしょうか。レスリングでは同点の場合は抽選で勝った方が相手の足を持ったところから試合を始めていましたが、柔道では互いに組み合ったところから始めることもできるのではないでしょうか。組み方に得手不得手があるならポイントの有利な方が好きな組み方を選べるようにします。それを繰り返しても勝負がつかない時はポイントで決めるようにするのです。それならもっと積極的な試合になると思うのですが。

もう一つスッキリしないことがありました。女子78キロ超級の準決勝だったと思います。どこの選手だったのか覚えていませんが、一人の選手だけが何度も帯を締め直していたのです。両方の選手が柔道着を直している場面はそれまでにもありましたが、片方の選手だけが何度も帯を締め直すのは初めて見ました。

その後、塚田真希選手と中国の選手との決勝戦で同じ場面が出てきたのです。塚田がリードして、残り時間わずかというところでまた中国選手が帯を締め直しているのです。その時に審判が「きつく締めるように」と言っていることを知りました。残り時間わずかの場面での中断は、疲れを回復させリードされている気持を切り替えることができる、そして相手を焦らせて集中力を奪うことができる、そんな効果があるのではないかと思いました。

その直後、最後まで攻めていった塚田は一瞬の隙を突かれ、一本を取られて金メダルを逃してしまいました。柔道着がはだけることは仕方ないとしても、帯がそんなに簡単に解けるのでしょうか。普通に試合をしていて解けるようなものでなければ、解けた場合には「効果」や「有効」程度の反則点を科すことも必要ではないかとさえ思いました。

塚田は前回のアテネ五輪での金メダルは「9割が運。ラッキーだった」と言っているそうです(朝日新聞 2008年8月16日 「残り8秒・・・全力の銀」  類似記事 http://www2.asahi.com/olympic2008/news/TKY200808160117.html。苦手とする中国の選手との対戦がなかったことなどがその理由のようです。

自分の苦手な相手が先に負けてくれるとラッキーと思うのが普通だと思うのですが、自分の前に立ちはだかるべき壁を全て越えてこそ真の勝利ということでしょうか。だからこそわずかの残り時間を守りに回るのではなく、最後まで攻め続けたのでしょう。そのために金メダルを逃したけれども、塚田の銀メダルは金以上に価値のあるメダルだと思います。

全ての選手がこのような姿勢で試合に臨めば、反則点などというルールは不要になるのではないでしょうか。

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