前回は完成後の写真のことを書きましたが、それよりも完成までの写真が重要だと思っています。おじさんは大工仕事が好きですし、家の構造などにも関心があるので、工事の様子は何度も見に行きました。もちろん写真もたくさん撮りました。
雑な工事などのトラブルを避けるために、作業内容が分かる建築中の写真を撮っておいた方がいいということを本などで読んでいたことと、家が建っていく様子を記録に残したいという思いからだったのですが、見たこともない部品や接合の方法など、おじさんの興味をそそることが沢山あったので、ついついそちらの写真が多くなってしまいました。
それらの写真は知りたいことがあって時々見るのですが、必要な写真を撮っていなかったと思うことがよくあります。写真はたくさん撮ったつもりだったのにです。
欲しい写真というのはほとんどが壁の中です。壁は、柱や間柱(まばしら)に水平に渡した胴縁(どうぶち)という細い板に石膏ボードなどを取り付けてから壁紙を貼るのが多いのではないかと思います。石膏ボードは軟らかいのでネジや釘が効きません。家具を固定したり少し重いものを吊すための釘を打つ場合などは柱や胴縁の場所でないと釘やネジが使えないということです。
おじさんは家具の配置を決めてから設計したので、家具を固定する場所は石膏ボードでなく合板にしてもらいました。合板のある部分はどこでもネジが効きます。でも生活しているうちに、それ以外の場所にも何かを取り付けたいということがあるのです。
胴縁の場所を探す道具も持っていますが、配線や配管の場所は分かりません。下手な場所に釘を打って配線や配管を傷つけたら大変なことになります。
そんなときに壁の内部が見られればどこに水道管があるのか、電気の配線はどうなっているかが分かります。そのためには石膏ボードを取り付ける前の写真を撮っておけばいいのです。とは言っても毎日現場にいるわけではないので難しいとは思いますが、工務店に依頼する等、何らかの方法が取れるのではないでしょうか。
もう一つ、写真を撮るときにしておいたら良かったと思うことがあります。それをしていないとせっかく撮った写真が役に立たないのです。それはどこの部分の写真かが分からないことです。カメラの向きによってはどちらが上なのかすら分からないこともあります。設計図も覚えるくらい見ていて、作業の現場もよく見ていたのに、それでも分からないのです。
写真を撮るときに「リビング東面」のように、どの部屋のどの方向かを書いた紙を一緒に撮影するとどこの壁かが分かります。またどちらが上か迷うこともありません。
あるいはデジカメなら何百枚、何千枚撮ってもフィルム代や現像料の心配は要らないので、前の撮影時と変化がなくても、毎回全部の壁を決めた順番に撮るのも一つの方法かもしれません。 これから家を建てる、あるいはリフォームをする場合は、トラブルを避けるための証拠写真や単なる記念のためだけではなく、どのように活用するかを考えて写真を撮っておいたらいいと思います。