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第3部「憂い」編 (叔父視点)

■ 未来への不安

「ね?いいでしょ?」

そんな甘えた声で誘い愛撫をねだってくる甥っ子の、悩みを知らぬげな天真爛漫
な笑顔に、俺は内心溜め息をついた。
(やり方を間違ったか…)


俺をひいては男を好きになる性癖を悩んで卑屈に育って欲しくは無かった。
好きな相手にのびのびと想いを素直に表現できる子にしたかった。
無理な背伸びはさせずゆっくりと導いたつもりだったが、こんなにも大らかで良
いのだろうかと、最近いささか不安が過る。
俺に振られた腹癒せに、自棄になってどこぞの馬鹿に身を任してしまう危険を
おかさせるくらいなら、いっそ俺がと腹を括り、念入りに手取り足取りじっくり教えたのが
悪かったのか…
欲望に正直で、快感に貪欲で、こうまでも明るい日の光の中で大胆に体を開かれ
るとコッチのほうが躊躇ってしまう。


「叔父さん…?」
無言で見つめるだけの俺の態度に痺れを切らしたのか、少し眉を顰めて俺を呼ぶ。
その天使の如く無垢な仕種に少し虐めてみたい気持ちが湧き上がって来る。
このまま焦らしたら、どうするだろう?
その体にはもう興味がないってフリをして見せたら…どうするだろう?
泣くだろうか?怒るだろうか?それとも歯を食いしばりじっと堪え忍ぶのだろうか?
少し憂えた大人の顔をさせてみたい気もするが、やっぱり今はこのままがいいと
思い直す。
そして何よりも俺自身、可愛い甥っ子をそうまでして今すぐ大人にさせたいわけ
じゃない。
本当はわかっている。
ほっといたってやがて嫌でも大人にならなくちゃならない時がやってくる。
俺達の関係を見直さなくてはならない時がやってくるだろう。
だが、それまでは…俺の傍にいて欲しい、その成長を見せて欲しい。
俺が恐々と含ませた哺乳ビンはとっくの昔に卒業した。
今はパック牛乳でもゴクゴク飲んでグングン大きくなってくれ。
大人の見る苦を味わうのはまだ先に取っておこう。


「老体を急かすなんて、困った奴だな…」
なんて言い訳しながら、これからの成長を伺わせる伸びやかな肢体に
俺は感慨を込めて手をのばした。


第3部.end  

by.ひより様