いちまいの絵



2010年7月

201007
『安息の泉』

紙に交響水彩
四切りサイズ

この絵を、この時期に描かなければ先に進めないのだと
確信があったが、様々な思いを注ぎ入れる難しさを感じて
やり直しを重ねた。

私には2月頃から 深い緑の中の泉の流れに埋もれる自分の
絵画映像(絵のイメージ)が常にあった。
5月から 口蹄疫で恐怖におののいて殺された
27万頭の牛たちのことを思った。

幾多の絵画映像が重なり
自分の内なる貯蔵庫に入りきれず、とても苦く重い心痛の期間だった。
それほど口蹄疫に纏わる出来事は、
私の中で大音響で鳴り続け、心を引き裂き砕き踏み付けにした。

「早く殺せっていったのに・・ちまちまやっていたってしょうがない」
という閣僚の発言や「どの道 食用で殺される」という意見
心無い、何も考えない、感謝の念の無い世情
人の命を支える荘厳なる摂理の、使命も何も果たせず、ただ産まれて奪われる命
今日7/9 描き終えて、宮崎の報道からは 処分と言う名の煉獄が終わった。
安らかに ただ 安らかにと 願うばかりだ。
猛暑、大雨、不安な事件・・そうした中で
心地よい涼の流れのある泉・・どこかで、共に
いつまでも護られてゆっくりと休んでいてほしい。

数々のスケッチを経て、
安息と守りと命の恵みとの思いを込めて描いた。
赤く美しい花が流れているイメージもあったが
屠られる連想を避けるために断念した。
未完成的な部分もあるが、これ以上は描けない絵だ。
今後の自分の作品制作に影響を及ぼすかもしれない。