いちまいの絵



2010年2月

201002
『おくり風』

紙に交響水彩
太地サイズ

有島武郎の小説『生れ出づる悩み』は
中学時代に何度も呼んで衝撃的だった。
そして自分も、こうなるだろうと思った。
完全な職業画家となれない漁村の青年・・
最近、このことが自分の脳内を翻弄する。
日々を重ね、疲労し、喜び、怒り、感じて
葛藤の中で生きたたことが、絵に表れる。

大学や習い事では決して産まれないもの
しかし生れ出づる苦しみ

深く心に突き刺さった悲しみの体感は
絵を描いて描いて描き倒して先に進むしか
画家としての道は無いのだろう。

義兄が亡くなって、今月で一年になる。
以前、加藤登紀子さんが、コンサート会場で
こんな話をされたことがあった。
心に花を・・そう言いますね。
花を咲かすためには、土が必要ですね。
良い土を作るのは、多くの枯葉たちです・・と。

亡くなった方々が残してくれた
生き様や言葉という葉っぱ
自分という、細枝に似た樹が
倒れたり、ふらつかないように
葉が養分豊かな土となって支えてくださる。

葉が散る間際の、いさぎよさを祝福するかのような紅葉
人生のフィナーレの葉たちが
おくり風に乗って、私に触れて 土になる。

想いは心に届き、やがて葛藤の末に
作品となる。

自分は もっと深く
もっと鮮烈に
『生れ出づる悩み』のように。

飼い猫がいまだに鳴かない。
捨てられる前の虐待のトラウマか・・

自分の『ものいえぬ(あてどころのない)』
悲しみの表現として フーを描いた。
フーにとっての おくり風は
先猫ミーが築いた 匂いや家の安心かもしれない。