いちまいの絵



2009年10月

200910
『収穫の稲穂幕(秋空のカーテン)』

紙に交響水彩 300mm×400mm
個人所蔵

絵空事とか、絵に描いた餅とか、絵という語は、
実在が無い、確かでないという表現をされる場合もある。

しかし、餅(実在)以上の、
確かな心の栄養や力を、生きた形で、
染み渡らせることも出来るのが 絵 だと私は信じる。

人は『見る』という中に、形を認識する以上の、
五感による感性で、心に何かを焼きつかせることが、
含まれると思う。
季節感の無かった夏が過ぎて、
鈴虫が合唱し、金木犀の花の香りに足を止め、
収穫の終わった田んぼに寝っ転がった。

夕焼けの空に、天日干しされた稲穂が、
カーテンのように並ぶ。幕の中には稲粒が、
きらら星のように輝く。
幕の上に、逆立ちして嬉しそうに留まる赤とんぼ、
ゆっくりと、ゆっくりと風で流れる あかね雲・・

絵描きは人を騙す。
薄い画布の上に、幾多の感動した実在を、
凝縮して吐露し、紡ぎ織り込りし、
画材と線とフォルムとパッションで、
心の世界を構築する。