いちまいの絵



2009年3月

200903
『かまど色の空』

キャンバスに油彩 F-40号 個人所蔵

なぜ空を描くのですか と時折質問される。
普通の空ではないですね とか
こんな空や雲はありえない などと言われる
私の答えは常に同じで『私に“見えた"写実です』

10代の頃家出をして絵を描き続けた。
養ってもらっていて『絵』が描けるかなどとイキガッタ。
地下鉄工事、各種料理人、ビル掃除、デイスコのボトルキーパー、カーペットクリーニング
魚屋、アニメーター、レタリングデザイナー、セル着色、ダスキン、郵便局、タイムライフ書籍営業
遊園地の乗り物デザイン、ウェイター、エンジニアなど、ありとあらゆる仕事やバイトの経験は
私にとって『生きた 絵 を描く』ためのものだった。

しかし、同じ10代の頃から頚椎を痛めて、精神的にも自分を追い込んで、内蔵も潰瘍寸前だった。
医者が認めないのに酷い痛みに苦しむの毎日と、描かなくてどうすると自らを叱咤する自分
信じていた人からの中傷や婚約破棄などもあって、死という文字も、脳裏に浮かんでは消えた。
救われたのは、狭量でなく相談に乗り、嘆きを聴いてくれる大空だった。
いつのまにか私は、空と会話していた。そして畏怖の念さえ感じる美しく広がる空のドラマは
私を感動させ、身震いさせ、根底から癒してくれるものだった。
この作品が約10年前に上野の東京都美術館に展示されたときに、観に来てくれた方が感動して泣いてくれた。
鳴り止まぬ持病と今も向き合って、きっと私は『私に“見えた"写実』の空を描いて行くだろう。